第6話 エンターテイナーの嘘
工作部で一緒の谷口君の誕生日パーティーが開かれることになり、僕は彼の家に向かった。
「あっ、
「うん、プレゼントも持ってきたよ」
「楽しみだなあ」
友達みんなで谷口君のお母さんが作ってくれたケーキとごちそうを食べ、楽しく歓談する。谷口君はさっそくプレゼントの包みを開け、テーブルの上に中身を並べてご
そんなことをしているうちに僕は退屈してきた。
林君のプレゼントは鍵付きの貯金箱だった。鍵というか、正確には3ケタの暗証番号をあらかじめ設定してロックするタイプのものだ。
時間を持てあましていた僕は、誰も見ていない
「あれっ!? 開かない……。さっきまで開けられたのに」
谷口君が異変に気付く。
「またまたぁー。じょうだんだろ? ちょっとかしてみろよ、ぼくが開けてやるよ」
林君が貯金箱を奪う。
「……おかしいな」
フタはびくともしない。
僕は笑いをこらえるのに必死だった。その場の誰一人として僕が暗証番号を勝手に設定したことに気づいていない。
谷口君のお母さんが僕たちの様子に気づいてリビングにやってきた。
「おかしいわね……。最初は開いたんでしょ?」
「うん……」
谷口君の表情が
よし。そろそろだな。
僕は満を持して谷口君から貯金箱を受け取る。そしてまるで
あっさり開錠できた貯金箱を見て、みんなは僕に尊敬のまなざしを向けた。
「すごい! どうして番号が分かったのっ!? 魔法なの!?」
いい気分だ。僕はスターだ。マジシャンだ。
周囲の自分への評価に浮かれていると突然、
「おい、なにしてるんだ」
谷口君に胸ぐらをつかまれた。
「なにって、パーティーを楽しんでるんだよ」
「そんなことは聞いてない。君がロックをかけたんだろう?」
「知らないよ。最初からロックされてたんだろう」
べつに怒ることないじゃないか。そう思った僕は彼に反抗した。
「まあまあ、せっかくの誕生日会なんだから、なかよくしようよ」
谷口君は僕のTシャツから手を離した。彼のお母さんが台所から心配そうに僕らを見ている。
「そうだよ。僕はみんなを楽しませようとしてやったんだ」
仕方がないので僕は正直に本当のことを言った。
谷口君は表情を
「草架君、ちょっとやりすぎちゃったね」
林君が僕を
「そうかな? これくらいのほうが楽しいと思うけど」
僕は腹いせとばかりに残っていたごちそうを食べまくった。おなかが痛くなりトイレを借りた。横腹の痛みのせいで歩けなくなり、谷口君のお母さんの車で家まで送ってもらった。
「あの子が悪いことしたわね。ごめんね」
車の中でお母さんは僕に謝ってくれた。
「そんなことないです。谷口君はいつだって友達のことを考えてくれるいい子です」
僕は小学生男子に求められる
「そう言ってくれると嬉しいわ。草架君は本当に大人ねえ」
お母さんは感心して僕のことを
「ところで、あなたがじゃんけんでズルをして工作部に入ったってあの子が言っていたのだけど、まさかねえ?」
「……」
僕は何も答えられなかった。
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