第24話 汎用魔術、【麻痺】
「陛下、帝国籍の魔人が多数検挙されました」
「そうか、徐々に侵食されつつあるのかもしれないな」
「どうなさいますか」
「各地の魔術師や冒険者の訓練を始めろ。そして対抗策を組み立てよ。いざとなればメルサイトの令嬢の戦術利用も厭わん」
「あの天使を使うのですか?」
「やむを得ない場合に限るがな。何しろ向こうに対してこちらの戦力が足りなさすぎる」
「承知しました」
◆◆◆
翌日、先生が入ってくるなり
「本日から対人を意識した魔術の訓練を授業に組み込んでいく。自分の身を守る技術だから真剣に取り組むように」
「そりゃ魔人がいるとなればそういう戦い方もしてくるもんな」
「死にたくねえから頑張るしかないよな」
クラスがざわめくがすぐ収まる。
「そしたら演習場に向かうぞ」
俺たちが演習場に向かうとそこには人型に模られた的がいくつもあった。
「殺しをせずに戦いが終わればそれ以上いいことはない。今回教えるのは適性属性関係なく使える相手を無力化させる汎用魔術だ」
「そんな魔術もあるのか」
「ええ、そうでもないと一般の人が魔術を扱えないでしょ。この世界の技術は魔術を基盤として発展したものが多いもの」
「アミルもよくそんなこと知ってるな」
「こんくらい一般常識だから覚えておきなさい」
「それじゃあ手本を見せてくぞ、
先生がそう唱えると、的は形を保てず液体のようになって離散した。
「これは特殊な的だから分かりやすくこうなるが、人に向けて撃ったらこうはならないから安心してくれ」
各々が的の前に立ち、魔術の訓練を始める。
「さて、俺らはどうするかな」
『拘束魔術ならお前の雷撃魔術を使うほうが効率がいい。電熱属性の研究でもしてはどうだ?』
「確かに、そうするよ。」
そうしてまた俺は自分の周りを隠しながら魔術の研究を始めた。
「基本的に複合属性や派生属性にはランクの概念が存在しないのか」
『そうだな、つまりは元となる魔術のランクによって複合後や派生後の威力が決まる。』
「じゃあ表示はされないけど威力はさまざまと。」
『ああ。お前の場合、上級と中級だから威力はかなりある。』
「もう一つ聞きたいんだが、武器召喚はそんな簡単にできるものなのか?」
『いいや、普通は先天属性の魔術を持っていても鍛錬が必要だ。だがお前には知恵の悪魔である私がついている。』
「メフィストのおかげなんだな」
『その通りだ』
その時、先生が授業を終了するため集まるように呼びかける声が聞こえた。
俺はカモフラージュを解き、そちらへ向かう。
「よし、それでは本日の授業はこれで終了とする。それと、来月には学内対抗武闘大会が行われる。腕に自信があるもの、申し込みは今日からだからなー」
『ほう…武闘大会。それも学内対抗か。よしアルト、申し込むぞ』
「マジで言ってるのか?」
『ああ、大マジだ』
「そうか、お前のことだからなんか理由があるんだろ?」
『まあな、そのうちわかるさ』
「そうかい…」
『そういえばアルト、今までちゃんと聞いたことはなかったがお前は何か目標とかはあるのか?』
「目標?ああ、俺を裏切った帝国に復讐す…」
俺は身に覚えのない言葉が口から出て驚いた。
『帝国…?お前は何か帝国に恨みでもあるのか?』
「確かにあるけど…裏切った…?」
自分でもなぜそんなことを言ったのかわからない。
それでもなぜか頭の中に出てきてそれが口をついて出たのだ。
この時から俺は自分が何かに侵されつつあることに気づき始めたのだった。
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