第23話 刺客

放課後になり、演習場へ向かう。

そこでは先生とあの生徒、そして俺のクラスメイト達が待っていた。


「どうもどうも、物分かりが良くて非常に助かるよ」


「それで、始めるんじゃないのか?」


「随分とやる気満々だねぇ」


「悪いけどお前に負ける気がしないからな」


そういって俺は模造剣を手に取り、正眼に構える。


「俺はお前を殺す気で行かせてもらうぜ」


そう言って彼は何も持たずに俺の正面に立つ。


「お前、武器はいいのか?」


「とっとと始めろ」


「そ、それでは始め!」


そうして戦いは始まった。


「その影にて魂を刈り取り喰らい顕現せよ、影鎌デスサイス」


「お前も先天属性の使い手か」


「俺の属性は特殊でな。暗黒の派生属性の殱影属性ってんだよ」


するとクレアが驚いたような声で、


「武器の型取りなしに加えて特殊属性の武器召喚!?」


と言う。


「武器の型取りなしってことは模造剣なしで顕現するのがすごいってことか?俺さっきやったよな…」


少し戸惑いながらも俺は魔術を駆使して奴の攻撃をいなす。


「小賢しい、【影打ち】!」


そう彼が唱えると小さな影が俺の影を射抜いた。

その瞬間俺は地面に映る影を完全に縫い付けられ身動きが取れなくなった。


「くっ、まずいな」


『お前も武器召喚を使えばいいだけではないか』


メフィストにそう言われ俺は急いで魔術を合成し、その剣の名を叫んだ。


「雷鳴と豪炎を纏いし名剣よ!ここに顕現せよ!電熱剣プラズマリア!」


そのとき俺の手に現れたのは高いエネルギーを放って燃えながらバチバチとスパークする剣だった。


「電熱属性?なんだそれは、俺の属性に敵うはずがねえんだよ!」


そういって彼が鎌を振り下ろすも、プラズマリアで受け止める。


「出力強化!」


俺がそういうと、プラズマリアは模造剣の刀身を焼き切り柄と炎と電撃の刃が激しく火花を散らす。


「くそっ、召喚、地獄犬ヘルハウンド!」


俺の前に燃え盛る首輪をつけた地獄の猛犬が現れ襲いかかる。


放電スパーク!」


俺は電気を放出しそのヘルハウンドを倒し相手に向かって走り出す。


電打ショック!」


彼の首筋にプラズマリアを近づけそう唱える。

すると彼はその場で気を失って倒れた。


「ふう、こんなもんでいいかな。これでとりあえず俺の勝ちだと思うんだが」


そう言って先生の方を向くと口を開け青ざめた顔をしておののいていた。


「どうしたんですか?」


そう言って振り返ると気を失ったまま浮き上がる彼の姿があった。

その肌は徐々に青黒く染まっていき頭からは角まで生えてくる。

そうして彼は何かに操られるかのようにこちらを見て鎌を構えている姿勢となった。

その眼窩は黒く塗りつぶされたように染まっている。


「あ…あれは!魔人か!」


「魔人?ってなんですか」


「簡単に言えば悪魔に乗っ取られた人間のことだ…!まさかこの学校に潜んでいるとは…」


「なあファウスト、お前も俺を乗っ取れたりすんのか?」


『やろうと思えばできるが、そんなことしてもこちらになんのメリットもない』


「そうか。あいつは倒していいんだな?」


『ああ、あいつは知性を持たない魔物みたいなもんだ、一思いにやってやれ」


「わかった」


奴は俺の方をじっと見つめ、突然叫び声を上げながら襲いかかってきた。

俺はそれをいなし、首目掛けて剣を振り下ろした。

だがすんでのところで俺は躊躇い、避けられる。


『なぜ躊躇した』


「いや、考えてみればこいつだって、元は人じゃないか。それを簡単に殺すなんてできない」


『それじゃあこの先、生きていけないぞ』


「何でだよ、なにも人を殺さなきゃ生きていけない道理なんてないだろ!」


『いいや、殺さなければこの先生き残れやしない。今にわかる』


「しょうがない、やるしかねえか」


そう言って一思いに剣を振り下ろすと奴の首は落ちた、と思ったが体がボロボロと崩れていき跡形もなくなった。


『これが奴らなりの証拠隠滅か、厄介なことをしやがる』


「エルマイト、無事か?」


「大丈夫です、先生」


こうしてひとまず波乱の決闘は幕を閉じた。

この事件をきっかけに王国では魔人審問が厳しく行われるようになった。

すると王国内に潜伏していた帝国籍の魔人たちが大量に検挙されたという。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る