第25話 特訓開始

武闘大会に出ることに決めた俺とメフィストだが、シグマ、ミナ、マルク、アミル、クレアも出ることを決めたようだった。

リチャードも出るらしい。

武闘大会はトーナメントになるため、一試合目から身内で当たる可能性も大いにある。

ということで、それぞれ手の内を見せないためにも俺がある程度は見て、それ以上の切り札などは自分で特訓してもらうことにした。


そうして一週間が経ち、今日は全員の基礎能力向上のためにダンジョンに潜ることにした。

選んだのは、アミルと踏破したダンジョンの近くにあるDランクのダンジョン。

ここには対峙した相手を模倣し、戦うミラースライムが出現するという噂を聞きつけたからだ。

今回メンバーに課したルールは3つ。

一つ、魔術を使わないこと。スキルの使用は許可する。

二つ、危険だと思ったらすぐに戦闘から離脱すること。

三つ、必ずこの訓練を通して強くなること。


「この訓練は希望者のみを募った。結果的に出場する全員が来ることになったわけだが、このルールが守れない場合、訓練への参加を禁止させてもらう。」


全員の了承は得たので、まずはお手本として俺が戦ってみることにする。

まずヴァインスを構え、迅雷を使う。

魔術は使用できないのでこれだけで戦うこととなる。

ミラースライムは、模倣した相手のステータスを全て再現するわけではない。

見たものを徐々に再現し、近づいていく。

つまり手の内を明かすほど不利になっていくのだ。

これは武闘大会と同じ。

初戦から全力を出せば後半に対策をされて詰む。

その練習でもあるのだ。

だからこそ手の内を見せすぎず素早く仕留めることが大事。


俺は迅雷で強化したスピードでミラースライムに突進する。

すでに剣を持った俺は模倣されていた。


これ以上模倣されないためにはどうすればいいか。

こちらを視界に入れさせなければ良いのだ。

人間の形を模倣したことで視覚は必然的に目に移る。

急所に近い核を攻撃すれば確実に防御してくるだろう。

俺は核を攻撃するフェイントをかけ、目を潰した。

そのまま後ろに回り込み、核から少しずらしてヴァインスで刺す。

そのまま核を抉るように取り出し、勝利した。

核を取り込むとスキル【模倣】を手に入れることができた。


「魔法なしでこれだけの戦いができるのか。俺たちもそのくらいできるか?」


マルクがそう尋ねる。


「まあ、身体強化なしじゃここまでは無理だろうな。だが、それぞれにできる得意な戦い方が見つかるはずだぞ。」


と俺は答えた。

次はシグマの番である。

彼の得物はやはり双剣である。


「魔法は使うなって話だったな?」


そういうと、シグマは妙な構えを取り始めた。

特注の双剣の柄の先は横に広がっており、握り込めるようになっていた。

人差し指と中指の間に本来持つであろう柄が挟まっている。

ちょうど拳の先に刃が来るような形だ。


「俺が使うアーセルン流は、元は剣じゃなく爪術や拳術の流派なんだ。それを剣でも扱えるようにしたのが俺の親父ってわけさ。アーセルン二刀流、交叉咲こうさざき!」


ミラースライムの模倣したシグマの胸に大きいバツ印が刻まれる。


「核はそこだな。アーセルン二刀流、

仁角月にかくづき!」


火花を立てて核が砕け散った。

俺とシグマは余裕で撃破。

想定通りである。


次はリチャードの番である。


「よーし、俺の番だな」


リチャードはショートソードを構える。


「来い、ドラン!」


そう地面に手をかざして現れたのは使い魔のレッサーワイバーンだった。


「ドラン!頼んだ!」


リチャードはドランの足に特注の手綱をかけドランが飛び上がる。

そのまま上から狙うつもりなのだ。


「ミラースライムったってこんなもんか!行くぞ!」


そのままミラースライムの直上で手綱を話し剣を構える。


「王国軍式剣術、正剣斬り!」


そう叫んでショートソードを振り下ろし着地した。


「まあ、俺の実力にかかればこんなもんよ」


リチャードはこちらに振り返りそう誇っている。


「おい、後ろ。」


俺が言うとリチャードは振り向き、間一髪でミラースライムの攻撃を交わした。


「リチャード、スライム体の時は物理的な攻撃は効かない、人型になるのを待て。」


そういうと、


「わーったよ、でも実際速攻は悪くない戦術だろ?」


そういってリチャードはミラースライムに改めて向き直った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る