第20話 ダンジョンからの帰還

アルガスが目を開けるとそこには朝見たばかりの一層があった。


「ほんとに着いちまったよ…」


「お、お前今朝の!ほんとに1日で戻ってきやがったのか!」


「ああ、まあな。でもボスはこの人に倒されてたよ。」


「は!?何を言ってるんだお前!」


豪華な装備を着ているアルガスを見て人々は何も疑わなかった。


「本当か!」


「ダンジョンを踏破したのか!」


「お、おいちょっと待て俺は…」


そういう間もなくアルガスは担ぎ上げられ、どこかへ連れて行かれた。

彼が伝説の冒険者として讃えられるのはまだ先の話。


「よし、帰ってこれたしここで解散にするか」


「き、今日は1日ありがとう」


「ああ、どういたしまして。また機会があったら頼むよ」


「あの…よかったら家に住ませてくれない?」


「はい???」


「いや、あの、私帰るとこなくて…」


「いやこっちも一応年頃の男の子なんですが…?」


「私だってそんなに年取ってないわよ!多分同い年くらいよ!」


「そういうことではなく…。まあうちでいいなら部屋作るけど」


「ほんと!って部屋作る!?いやいやそこまでしてもらうつもりは…」


「いやまあ何かと気になるだろうし、一部屋くらいまあいいよ」


「あ、ありがとう…」


そうしてうちに愉快な仲間が1人加わった。


「そしたら転移で帰るぞ。」


ダンジョン内ではダンジョン外への転移ができないため、外に出てから行うことにした。


「意外と時間かかってたんだな…」


暗くなりかけの空を見てそう言う。


「今日はこの辺でご飯食べてくか」


「もちろん奢りよね?」


「自分の分は払ってもらうぞ」


「えー、けちー」


「いや、今日の宝があるだろ。あれあったらしばらくは遊んで暮らせるぞ」


「覚えてたかー」


「まだそんなに時間経ってねえし俺はボケてねえよ」


そう話しながらダンジョン街を歩いていく。

ダンジョンの周辺は冒険者が使う店などが揃った少し栄えた街が多い。

この街もダンジョンに来る冒険者のおかげで潤い、今日もその光を明るく照らしている。

もちろん酒場はたくさんある。

俺たちは目ぼしい酒場を見つけて入り、夕食を取ることにした。


「そしたら、ワイルドボアのステーキ定食ください」


「私はファングピラニアのソテーとドライアドのサラダとパンのセットで」


「はいよ。ってかおたくら、今日ダンジョンを踏破したっていう奴と一緒にいた二人組じゃねえか?」


「あ、まあそうですけど」


「そうかそうか、ダンジョンを踏破するやつなんて久しぶりだからな!今日は俺の奢りでいいよ!」


「なら私ステーキも追加でー!」


「どんだけ食うんだ…」


店主の粋な計らいで無料でご馳走になることになった。

そこから他の冒険者も巻き込んでその酒場は宴会の会場となった。

そのまま楽しい夕食の時間は過ぎていった。


◆◆◆


「あのダンジョンが踏破された?」


「ええ、なんでも一日で踏破されたとか」


「あの勇者ですら3日はかかったんだぞ?」


「それと、ダンジョンの中層の壁に大きな傷があったそうで」


「世界の理に触れられるほどの魔法を使った防御が張り巡らされている壁に傷だと?」


「ふむ、我らに何か大きい脅威が迫ってきているのやもしれぬな」


「どうする?何か対策を講じるか?」


「とにかく、爵位持ちの上級魔族を招集しろ。緊急で会議を行う」


「承知致しました」


◆◆◆


宴が終わり、家に向かう。


「いやぁー、随分食ったな」


「奢りなんだからたくさん食べなきゃ!」


「まあそれはそうなんだけど…」


「なによ?」


「そんな細い体してどうやったらあんなに食えるんだよ…」


「いいじゃない!食欲はいつも全ての原動力よ!」


「うちの家計を食費でぶっ壊すのはやめてくれよ…?」


「家に住ませてもらうんだからそれくらい心得てるわよ」


家に着くと、もうすでに改築が終わって一部屋増えていた。

内装もちゃんと女の子向けというかアミルの要望通りになっている。

ダンジョンを出る前にMEMS(魔術速達郵便)の手紙で家の改築を頼んでおいたのだがさすがは一日で俺の家を作った業者である。

2人ともども寝る準備を終え、俺は明日の学校に備えて寝ることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る