第19話 ダンジョンボスとの邂逅(?)

「ここ何層だ?」


「知らないわよ…。こんなスピードで降りていく人初めて見たわ…」


「ほーん、まいいか。そんで…これより下はなさそうだな」


「なんでそんなことわかるのよ!」


「そりゃ【超音波探知エコーレーダー】のおかげだよ」


「なんか便利なスキルがあるのね」


それはそれとして、俺たちは今大きな門の前に立っている。

いかにもボスがいる部屋の扉のようである。

しかしどうやって開けたものか…


『力ずくでよいだろう』


「まあ確かに、どうせいたとしても敵だから遠慮する必要はないか」


そう言って俺は、迅雷と身体強化をかけて少し力を入れて扉を押す。

すると扉は大きな音を立てて奥に倒れた。


「ありゃ、力入れすぎたか」


「力入れすぎてもそんなことにはならないわよ!」


「そうか?まあ身体強化つけてるから」


「それでも普通はならないの!」


「へえ、まあいいや。進もう」


そうして進むとそこには大広間があり、その中心にはミノタウロスが鎮座している。

…はずだった。


--数十秒前…


扉の前で何者かが話している。

挑戦者だろうか。

ミノタウロスはそう考えた。

そうしているうちに2人のうちの1人が扉に手をかけた。

そろそろ入ってくるかと思い、


《我が眠りを妨げるのは何者だ》


そう言ってミノタウロスが顔を上げると、目の前にあったのは、今まさに自分に倒れかかってくる鋼鉄の扉であった。

そのままなすすべもなくミノタウロスは扉の下敷きとなってしまったのだった。


そして時は現在へ戻る。


「いなくないか?ボス」


「きっとただの空き部屋だったのよ。あなたの探知が間違っててまだ下の階層があるんじゃないの?」


「いやいやそんなはず…。あ、なんか下にある」


「ほらね、言ったとおりでしょ?」


「そこの柱から隠し通路が伸びてるっぽいな」


そう言って俺は一本の柱に向かうと、それにヴァインスで人が通れるくらいの大きさの穴を開けた。

するとそこには下へと続く階段があった。


「よし、行くか」


「これ以上進むなんて無茶よ!早く帰りましょ!」


「いやいや、踏破してこそだろ。嫌だったらここで待ってていいぞ」


俺がそう言うと、


「それは話が別だってのよー!」


そう言いながらなんだかんだついてくるようだった。

そのまま螺旋状に伸びる階段を降りていくと、そこにはまた部屋があった。


「ここがダンジョンボスの部屋か?」


「そうかもしれないわね…、気を引き締めなさいよ!戦えるのはアンタだけなんだから!」


「アミルは戦ってくれないのか?」


「そんなこと言ったって戦えないわよ!」


「ならまあしょうがないか」


そうして扉を開けると、そこにいたのは…


昼寝をしている謎の男だった。


「ん〜、むにゃむにゃ。俺が英雄だぁ」


「なんだ、コイツ…。こいつがダンジョンボスなのか?どうすりゃいいんだ?どうみても人間だぞ…?」


「し、知らないわよ!起こしてみればいいじゃない!」


「わかったよ…、おい、そこのあんた。ちょっと起きろよ」


「ん?誰だぁ、昼寝を邪魔する奴は」


「俺はアルター・エルマイトという」


「ふーん。俺はアルガス・メイジだ。で?なんか用か?」


「いや、なんであんたみたいな普通の人間がダンジョンの最深部にいるんだよ」


「はぁ?ここがダンジョン最深部なわけねえだろ?俺が掘ってきたんだぞ?」


そう言って彼が指差したところには人1人通れるくらいの穴が空いていて、近くにはスコップが落ちていた。


「あんたがボスを倒したんじゃないのか?」


「え、ボス?いなかったのか?」


ここでアルガスの頭には悪い考えがよぎった。


「あ、ああいやぁ、本当は俺が倒したんだ。嘘ついて悪かったな。この穴は脱出用だ」


「そうだったんだな。どうりで」


「た、宝は分けてやるよ。あんたらもここまできたんだから」


「いや、いらないよ。自分で持って帰ればいい」


「そんなこと言ってもこれだけの宝…」


「じゃあそこら辺にある宝を持てるだけ持ってくれ」


「何するつもりなんだ?」


「一層まで飛ぶ」


「はぁ?そんなことできるわけ…」


そう言いながらもアルガスはとりあえず豪華な装飾のついた鎧を着て大きな剣を持つ。


「アミルも宝は持ったか?」


「ええ、持ったわよ」


「じゃあいくぞ、【転移】」


そうして宝物殿にあった三つの人影は消えたのだった。


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