第21話 新たな仲間

「七議長の皆様。かのダンジョンを踏破したであろう人物を発見いたしました」


「ほう、何者だ」


「大天使の加護のついた鎧と大剣を持ったアルガス・メイジという男のようです」


「奴の経歴は?」


「それが…一切の情報がないのです」


「しかしそやつのメイジという名…。かのパラディンと同じであるな」


「ほう、あの勇者と共に冒険したカムロ・メイジか」


「そして、もう1人。最下層で目撃された少年がおります」


「何者だ?」


「アルター・エルマイト。核術師の一族の末裔です」


「なんと!エルマイトとな!あの一族は絶えさせなければならぬ。歴史上最も忌々しい一族だ」


「ただ核術師の職が継がれているかわかりませんな」


「しかしメイジの名を持つ聖騎士と、エルマイトの末裔…、あまり良い予感はせぬな」


「早急に火種は取り除かなくてはならぬ」


「エルマイトはどこにいる」


「魔術学校に通っているようです」


「リンドヴルムめ…やりおったな」


「さすがは元賢者、行動が早い」


「魔術学校に我々の手の者を送るのだ」


「そう言われると思い、すでにそうしてあります」


「そうか、それでは本日の七首会議はこれにて終了とする」


◆◆◆


「アミルー、朝だぞー」


「あともうちょっとだけ…」


「んなこと言ってると置いてくぞー」


「ああそれはだめ!起きるからー!」


なぜこんな会話をしているかというと、昨日の事情をリンドヴルム校長に話したところ魔術学校にアミルを編入させてもらえるとのことだった。

そのため朝は一緒に出なくてはならない。

俺は朝食を2人分作り自分の分を食べる。

そのうちアミルも起きてきて朝食を食べ、着替えて学校に向かうのだ。


「アルトくんおはよー」


「ああ、おはようミナ」


「は、初めまして」


「えー!はじめましてー!アルトくんの彼女ー?」


「なわけないだろ」


「あんまりからかってやるなよミナ。よろしくな、俺はマルクだ」


「よ、よろしく。私は‥アミル。アミル…メルサイト…。」


「え!?メルサイト!私もです!アミルさん!」


そう言って駆け寄ってきたのはクレアだった。


「あなた…って、クレアちゃんじゃない!こんなとこにいたのね!」


「え!私のこと知ってるんですか!」


「ああ、覚えてないのね…しょうがないわ、ずいぶん前のことだし」


アミルが言うには、メルサイト家分家から本家であるアミルの家に養子として引き取られたのがクレアであり、アミルは実は小さい頃に誘拐され行方不明となっていた。

アミルとクレアは小さい頃に一度遊んだことがあり、その次の日にアミルが行方不明となってクレアが本家に迎え入れられたのだ。


「そうだったんですね…。それじゃあ、うちに戻ってきて暮らしません?」


「いえ、遠慮しとくわ。もう私のことなんか忘れてるわよ。それに私にはアルトとの家があるからね」


「え!?まさかお二人は一緒に暮らしてるんですか!」


「そうよ?」


「ももももしかして許婚とかぁ…」


そう言ってクレアは真っ赤になって顔から湯気を出してしまった。


「別に結婚もしてないし、付き合ってもないわよ」


「よ、よかったぁ…」


一通りアミルの自己紹介も終わったところに、ハイル先生が入ってきた。


「えー、今日は転入生が2人だな。いるんだ。アミルの方はもう自己紹介が終わっているかな?それではもう1人に来てもらおう」


「シグマ・アーセルンだ。これからよろしく」


そこに現れたのは白髪と黒髪の混ざった髪と黄金の目を持つ少年だった。


「彼は極光と暗黒の先天二属性持ちだ。仲良くしてやってくれ」


「先天二属性…!」


「そしたら新入生歓迎恒例の模擬戦やるか!」


そうして俺たちは演習場へ向かった。


「よし、そしたらアミルとやってみたい奴はいるか?」


「はいはーい!私やるー!」


そう立候補したのはミナだった。


「よろしくねー!全力で行くからね!」


「こっちこそ全力で行くわよ」


そうして模擬戦が始まる。

アミルは支給された模造剣と服に付与魔術をかける。

付与したのは切れ味を犠牲にした取り回しと、防御を犠牲にしたスピードだった。


「そんなに防御力下げたら耐えられないよー!おいでー!猛犬ハウンド!」


ミナが使うのは召喚術。

彼女の新しい切り札だ。

ハウンドはアミルに凶暴に襲いかかる。


「甘いわね。当たらなければ防御力なんていらないのよ」


素早くハウンドの背後を取り、模造剣をハウンドの脳天に振り下ろす。


「そんなナマクラじゃこの子は倒せないわよ!」


しかしアミルは素早く模造剣に付与をする。


「知ってる?切れ味を負の領域まで下げるとね、最強の打撃武器になるのよ」


そうしてハウンドは一発で仕留められ、ミナの首元に模造剣が迫った。


「勝負あり!」


「強いわねー、あなた本当に!」


「なんだよ、戦えるじゃねえか」


「昨日のあなたの戦いを見て思いついたのよ」


そう言ってアミルはふふっと笑った。

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