第10話 祝!初授業

演習場に向かっていると、クレアが近づいてきて、


「昨日はありがとうございました。少しお話でもしませんか?」


「ああ、いいけど。リチャード君はいいのか?」


「彼は私に気があるようですが、あまり好きな性格じゃないので…」


確かに、なんか好きな子にちょっかいとかかけてそうだな。

しかし昨日見たスキルは和平領域ピースフルゾーンだけだったが魔術も使えるんだろうか。


「クレアは、何属性の魔術を扱えるんだ?」


「私は、風と光です。アルトさんは?」


「俺は火炎、流水、雷撃かなぁ。」


「それって、後から習得できない属性じゃないですか!!」


「え、そうなのか?」


「大抵の人は知らないんですけど、後天的な属性って一文字で表されるんです。例えば、火、水、風、雷、光、闇みたいに。でも先天的なものって、火炎、流水、疾風、雷撃、極光、暗黒って感じで基本的に2文字なんです」


「そうだったのか、知らなかったな」


『多分核に刻まれた先天的なものだけを見ることが出来るのだろうな、この【核読み】は』


まあ、核に刻まれた魔術だから先天属性の魔術を使えるんだろう。

先天的な属性と後天的な属性の違いは、魔術の自由度だという。

俺がフレイムランスをイメージから発動できたのはそれが理由だ。

普通の魔術は詠唱することで術式を展開し、魔術を放つ。

ちなみに魔術に似たもので魔法というものもあるが、これは法とあるようにこの世の理に干渉するものらしい。

たとえば転移の指輪に込められているのは転移魔法だ。

クレアと話しながら歩いていると演習場に着いた。


「広いなぁ、これなら思いっきり魔術を使えるな」


「早くアルトさんの魔術が見たいです!」


そういえばゴブリンを追い払った時は魔術使わなかったっけか。

すると先生がやってきた。


「とりあえず、的を出すから自由に打ち込んでていいぞー。先生は少しトイレに行ってくる」


そう言われると生徒たちは次々に魔術を使い始めた。

俺は、こんだけの演習場があるなら全力を出してみたいと思う。

火球ファイアーボールの出力を最大に、しかし大きさは一般的なものと同じに留める。

イメージを練るのはかなり難しいが圧縮する意識で発動すると、実現できた。

そのまま的に向かって放つと、凄まじい音がして的が木っ端微塵になった。

周りを見ると他の生徒が全員あんぐりしている。


「無詠唱だぜ…まじかよ」


「なんだよあの威力、大きさは俺らのと変わらないじゃん」


「あんなの当たったら死ぬわよ…。」


そう話しているのも聞こえる。

全力を出しても的が壊れるだけで済むこの学校は本当にいいところだな。

色々実験にも使えそうだし、この学校に入って正解だったな。


「おいおい、何があったんだよ。そんなざわついて。あ、エルマイトの分の的は出してなかったか?」


「いや…ちょっと魔術使ったら木っ端微塵になっちゃって…」


「木っ端微塵!?ありゃ俺でも壊せない特注品だぞ!?とんでもねえことするもんだ」


すると他の生徒たちは俺からこそこそと離れていく。


「えっとな…この演習のラストに模擬戦を絶対やるんだが、誰かエルマイトとやりたいやついるか?」


「「「いやです」」」


「えぇ…、なんでだよ。」


「あんなの当たったら死ぬに決まってるでしょうが!!」


「いや、ちゃんと威力は調節するよ?」


「うるせえ!お前の手加減がどんなもんかなんてこっちにはわからねえんだよ!」


そんなことを言われなかなか相手が決まらない。

すると、


「じゃあ俺がやってやるよ、どうせあの的だけハリボテなんだよ。先生より強い奴がこの学校にいるわけないだろ」


と、リチャード君が立候補してくれた。


「俺だって魔術の扱いには自信があるんだ、お前よりもな!」


「そうか、じゃあよろしくな」


その後も演習は続くが、先生には威力を加減してくれと言われてしまった。

あの的は割と高いものらしい。

とりあえず流水魔術と火炎魔術の複合で蜃気楼を作り出し、火炎魔術だけを使っているように偽装する。

3属性はかなり珍しいらしい。

冒険者ギルドではあまり3属性使える魔術師がいないな程度の認識でしかないらしいが、この学校では大変なことだという。

その裏で、俺は雷撃魔術の練習をすることにした。

雷撃魔術のランクは、初級が電気エレキ系、中級がサンダー系、上級は雷電サンダーボルト系、超級は稲妻ケラウノス系と分かれている。

俺の使える魔術は全て先天属性のものだ。

しかしもともと自分のものでないため、努力でランクを上げることはできない。

そこがネックである。

先天属性を持つ魔術師の多くは鍛錬によってその魔術の練度を高め、ランクを上げることができる。

しかし俺の場合は、名前に表示されるランクが上限となる。

そのせいで超級を使ってみることができなかったりするのだ。

そして、とうとう模擬戦の時間がやってくることとなった。

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