第11話 模擬戦

今回の模擬戦では用意された武器を使うため、せっかく作ってもらったヴァインスの出番はなかった。

ルールとしては、殺しはなし、重症になることもなしだという。

そのまま模造剣を構え、準備完了の合図を出す。


「それではこれより模擬戦を開始する。ルールは先ほど言った通り。位置について、始め!」


その掛け声と共にリチャードはこちらに走り込んでくる。

とりあえず身体強化をかけてその突撃を回避し、様子を見る。

すると、リチャードは振り向きざまに


「すべてを焼く火となれ!【火球ファイアーボール】!!」


その詠唱と共に他の生徒たちより大きい火球を飛ばしてくる。

しかし、


「【水壁ウォーターバリア】」


俺が流水魔術で火球をかき消してしまう。


「火と水か、正反対の属性をよく扱えるな。普通は親和性の高い属性二つとかが使えるもんだけどな、まあいい。さっき的に当てていたのは火球だったしこれでお前の属性が知れた」


「それで?打開策が見つかったか?」


「ああ、より強い火属性魔術をぶつければ水壁でも防げないだろ!【火槍ファイアランス】!!」


「貫通力を増したか。だけど魔術は想像力が大事だ。壁から城へ!【希水城アクアキャッスル】!」


そこに現れたのは、火の槍など決して通さないという決意を一目にして知らしめるような水の城だった。


「そろそろ手は尽きたか?それじゃあ、【水牢ウォーターロック】。これで動けないだろ」


「なっ、何すんだ!放せこんちくしょう!」


リチャードは、水に絡め取られ全く動けなくなってしまう。


「勝負あったな。この勝負、エルマイトの勝利!」


そう先生の掛け声を聞くと、俺は魔術を解除した。

リチャードはいきり立っていたが、まあこちらの方は勝ちである。

実は【水牢ウォーターロック】に電流を流し、動きを制限していたのだ。

これがリチャードが動けなかったタネである。

魔力を通した水は、電解質を含む水溶液のように電気を通しやすいということをメフィストに教わった。

電解質というのがなんなのか知らなかったがそんなことも知っているあたりやはり全知の書に封印された知識を司る悪魔といったところだろう。

属性魔術が使えると、その属性を応用して魔術とは行かないまでも属性を操ることができる。

最近わかったことだ。

模擬戦を見ていた周りの生徒たちはポカンとしていた。


「大丈夫かー、お前らー」


と先生が声をかけると、


「あれに勝てる人っているんですか…」


そう言って放心状態になっている。

なんでも、クラスで1番の成績を取ることで奨学金をもらうことができるらしい。


「いやいや、エルマイトは1番を取らなくても学費無料なんだから候補に入ってないぞ。エルマイトを除いたお前らの中から選ばれるぞ」


「それを聞いてすこし気が楽になりました…」


と言いつつも、ほとんどが放心状態のままだった。

そしてその日の学校が昼で終わり、帰る準備をしていると、


「アルトくん、ご飯食べに行きませんか?」


「え?ああ、まあいいけど」


「よかった!私の友達を紹介したいんです!」


「どこに行くんだ?」


飛猫亭とびねこていっていうお店です!すごく美味しいんですよ!」


と、クレアと会話して店に向かった。


◆◆◆


「私はクレアの幼馴染のミナ・フローラント、よろしくね」


「ああ、よろしく」


「俺はマルク・アウグストスって言うんだ、よろしくな!」


「よろしく」


と、クレアの友達2人との自己紹介が終わる。


「なんとまあお嬢様クレアが男の子連れてくるとはね〜」


「びっくりしたよ。まあ俺はいい友達になれそうだからいいけどな」


「2人とも、なんか勘違いしてないか?」


「そうです!誤解です!私たちは決してまだ付き合ってなど…」


うん、まあ会ったばっかだから付き合ってるわけがないとは思うが。


「「『まだ』?」」


「い、いやいやそんな会ったばかりの人にそんな迷惑のかかるようなこと…っ!」


なぜだかクレアがとても慌てている。


「ってことらしいから、クレアをよろしくね?アルトくん」


「どういうことなのかいまいち分からないけどまあうん、仲良くするよ」


「どういうことなのかわからなくて大丈夫です!!」


「ん?そうか、わかった」


そう会話をしながらご飯を食べる。

こんな経験は初めてだしかなり楽しい。

そうして食事も終わりそれぞれ帰ることになったが、俺はクレアを家まで送っていくことにした。


「急に誘ったのに来ていただいてありがとうございました」


「いやいや、俺もこういうの初めてだったし楽しかったよ」


「それはよかったです!それなら次は二人で…」


そこまで言うとクレアは顔を赤くし口ごもってしまった。


「二人で行きたいのか?いいぞ?」


「ほ、本当ですか!?とっても嬉しいです!」


そう話をしてクレアと家の前で別れ、自分の家に帰った。


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