第15話 知恵を司る者

ラファエルについてメフィストに聞いてみた。

彼女は知恵を司る大天使、そしてメフィストは知恵を司る悪魔であるため何かと因縁があるのだそうだ。

悪魔や天使は多元世界に存在しているため、さまざまな並行世界全てに飛ぶことができるとのことだった。

並行世界というのはこの世界とはまた別の世界がたくさんあるという概念らしい。

そのため知恵を司る彼らは全ての並行世界の知識を持っている。

全く知らない名前が急に出てくるところもそれに由来するのだとか。

ちなみに、天使と悪魔の間に存在する違いは属性のみだという。

彼らは幻人族ファントムという種族で、属性として光や極光を得意とするものが天使と呼ばれ、闇や暗闇を得意とするものが悪魔と呼ばれるらしい。

それ以外の属性を扱える者もいるそうだが、基本的な区別はそこらしい。


「だいたいわかってくれたか?」


「はい!分かりました!ちゃんと秘密にしておきます!」


俺はクレアに真実を話し、それを黙っててもらうように頼んだ。

次の授業はなんだったか。


[魔物の核について:フロイド・カーマイト]


そうか、次があのフロイド先生の授業か。

メフィストの言う通り彼はかなり怪しい。

授業中でも何かされるかもしれない。

気をつけて受けなければ。


「それでは、2年に入ってから始めての僕の授業を始めていくよー」


「フロイド先生の授業は難しくて面白くないんだよな」


「そこー、今年は易しくするから大丈夫だよ」


「で、なんの授業やるんだよ!」


「あれ、予定に書いてなかったっけ。いや、書いたけどな」


リチャードとフロイド先生の会話が続く。


「それじゃ、本題に入っていこう。今日の授業は魔物の核についてだ。みんな、魔物の核については知ってるよな?」


「「「知ってまーす」」」」


「よし、それじゃあ実物を見たことがある者」


「………」


「あ、俺あります」


手を挙げたのは俺だけだった。


「1人か。さてはみんな常日頃魔物を倒すときに核を攻撃しているね?」


「何が悪いんだよ!」


「それではその魔物によっての核の違いなんかを観察できないんだ」


「観察することなんかほぼないと思うんですけどー」


「核とは興味深いものでね、そこにはその魔物が生きてきたあらゆる記憶や魂が刻まれているんだ」


「それで?」


「だからそれを『読む』ことで彼らの使うスキルや魔術を知ることができる。つまり対策ができるんだ」


「でもどうやって核を『読む』んだよ?」


「それができるのはある限られた一族だけ。それが、エルマイト家だ」


「「「エルマイト!?」」」


かなり重要ではないかと思われる情報をサラッと言われた!?

しかしこれだけでは核術師の核心には触れていない。

まだ大人しく聞いているとしよう。


「去年、僕は王都から遠く離れたミタルという街に行った。そこにはある少年がいたんだよ。それがアルター・エルマイト、彼だ」


「えぇっ!お前が!?」


「ただ、彼は戦闘ではなく核の研究にその能力ちからを使っていたのだけどね」


「なんでそんなことまで…」


「実はね、僕の母の家名はエルマイトなんだ。父がカーマイトの姓を持っているんだけどね。だから、フロイド・エルマイトでもあるのさ」


「そうだったんですか…、じゃあ親戚ってことですね」


「そういうことになるね。まあ、身の上話はここら辺にして。核にはまだまだ隠された謎が多くある。核を『読む』力である【核読み】の能力を持っている僕はその研究を行っているんだ」


「じゃあ冒険者をやっているのって…」


「そう、さまざまな核を手に入れるためだよ」


「そうだったんですか…」


「これからはこの核について詳しく話していこうと思っているからよろしくね」


そうして警戒していたフロイド先生の授業は無事に終了した。

そしてその後も授業が続き、今日は魔術の予備知識の授業は一応受けておいた方がいいとのことなので受けておくことにした。

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