第13話 打倒!ワイバーン

入学から一週間ほど経ったある日の早朝、日課の走り込みを王都の前で草原で行っていると、この前食事をした3人が魔物を相手取って戦っているのが見えた。

少し苦戦しているようだったので、すぐにカバーに入れるように少し近づいておく。

相手はワイルドボアという大きい猪だった。

ミナが魔力切れになってしまっているようだが、魔力薬を持っていたので平気だろう。


人が魔力切れになる仕組みは、人間が魔力を操る器官が限界を迎えるために起こる。

体内の魔力を利用しない人間は魔力が完全に枯渇するということはないのだ。

しかし魔力操作器官が疲れ果ててしまうと使えない。

魔力薬はその器官を急速に回復させるものなのだ。

ちょうど3人がワイルドボアを倒したのが見えた。

助けはいらなかったかと安堵していると空から大きな影が飛来する。

ワイルドボアの血の匂いに誘われたワイバーンである。

すかさず俺は間に割って入り、


希水刃アクアカッター!!」


と魔術を使用した。

その水刃はワイバーンの飛膜を突き破った。

そしてワイバーンが墜落すると、喉元にある急所にヴァインスで止めを刺す。

するとワイバーンは息絶えた。


「いやぁ、助かったよほんとに」


マルクがそういって座り込む。


「私たち、バイトでこの依頼やってたんだけど、スライム倒したら次々と強い魔物が寄ってきちゃって…」


とミナが疲れたように言う。 

ワイルドボアは依頼対象じゃなかったのか。


「ちなみにバイトっていうのは?」


「それは、学校が出してる依頼なんだけど、冒険者ランクが見習いのGでも受けられるのよ」


「じゃあ君たちはGランクってことか」


「まあな、アルトはどうなんだ?」


「俺は入学前に冒険者登録しててな、今は確かDランクだったな」


「D!Dランクでワイバーン瞬殺できるってどういうことよ…」


「ワイバーンはランク高いのか?」


「ええ、ワイバーンはCランクに設定されてる魔物なんです。」


「そうだったのか、ちなみにワイルドボアは?」


「あれは確かDランクです」


「よく3人で倒せたな」


「危ないところだったよ。ミナが飲んだ魔力薬で最後だったんだ」


「まあ私たちだけでワイバーンと戦ってたら確実に1人は死んでたでしょうね」


「アルトさんがきてくれて助かりました」


「いやいや、朝のトレーニングしてたら3人が見えたから来てみただけだよ」


運が良かったというべきか悪かったというべきか、まあ全員助かったのでよしとしよう。

そのまま俺はトレーニングを終え、彼らと帰ることにした。


「そういえばまだ魔術の属性教えてなかったよな、俺は火属性が使えるんだ!」


と、マルクが言う。


「私は闇ね。」


とミナが続ける。


「私は前もお伝えしましたが、光と風です」


「俺は、火炎、流水、雷撃だ。珍しいらしいからあんまり口外しないでもらえると助かる」


「先天三属性!!賢者に迫る勢いじゃないの!」


「賢者?そんなのがいるのか?」


話を聞いてみると、賢者は後天の五属性が使える、または先天属性2つが超級であることが条件らしい。

つまり先天三属性は珍しいが俺のは最高でも上級止まりなので賢者にはならないが同等レベルということだ。


「やっぱりアルトはゆくゆくは賢者を目指してたりするのか?」


「いや、目指してるも何も今その存在を知ったんだけど…」


「確かにそうだな…」


「じゃあなんで魔術学校に入ったのよ!」


「まあ半ば無理矢理にだな…」


そうして俺は魔術学校に呼ばれた経緯を説明した。


「そうだったんだな、ちなみにその横に浮いてるのは?」


「ああ、こいつか。こいつは俺の使い魔の…」


『ファウストとでも呼んでくれ』


「おおっ!喋った!!」


「ってことはかなり高位の使い魔なんじゃない!?」


『まあ悪魔だからな』


「おい、それ言っていいのか?」


『問題ない。悪魔の使い魔などこの世にごまんといる』


「そうなんだな…」


「確かにそうだけどここまではっきり言葉を喋る使い魔はそうそういないわよ」


「いいパートナーに出会ったな、アルト」


「そうだな」


「今日は使い魔召喚の授業だろ?」


「そうです!どんな使い魔が来てくれるか楽しみです!」


と話しながら飛猫亭で朝食を取る。

それから家で着替えて学校に向かった。


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