第5話 武器を求めて

依頼を終えてギルドに戻ると報酬が出た。

大体銀貨3枚ほどが薬草採取1日の報酬だという。

この街で1人が1日暮らすなら銀貨2枚あればまずまずの生活はできる。


「薬草採取ってだけでこれだけもらえるならいいもんだな。みんな冒険者をやるのはこれが理由か」


『だがあの襲撃者達が冒険者なのになぜ貧困にあえいでいたと思う?』


「あ、確かに。でもそうか、この報酬は1人が生きていくなら十分だけど家族を養うには足りないんだ」


『そうだ。だからあの襲撃者達の大半は家族持ちだろう』


「まあ、死んでしまったら元も子もないけどな」


『彼らの残された家族のことを思うと、いたたまれないな』


彼らにも家族がいたが、こちらも大切な家族を殺されている。

おあいこだろう。


「とにかくあの大男が何者なのかを調べなきゃいけないな」


『まあ大体目星はついている。おそらく帝国のものだろう。服に帝国の紋章が付いていた。隠していたつもりだろうが隠しきれていなかったしな』


「帝国の人間がなぜ…。狙いは全知の書、つまりメフィストだったっぽかったんだがなぁ」


『私はそこら辺は見ていないから知らん』


「え、見てたから助けてくれたんじゃないのか」


『いや、見えてはいない。ただお前が最後に頼ったのが全知の書、その気持ちに応えたまで』


そうだったのか。

それにしてもこのまま冒険者稼業を続けるならランクを上げることも考えなくてはいけない。

報酬をたくさんもらえば新しい核を買うことができて研究も捗るはずだ!


『馬鹿かお前は。なぜ戦える力を手に入れたのに核を買う?戦って手に入れれば良いだけの話。なんのための力だ?これは』


確かに…。

痛いところをつかれた。

でもまあ言っていることは正しいしその方がお金もかからなくていいと思う。


『そういえば、魔術に耐性を持つ魔物にはどう立ち向かうつもりだ?』


「そうだな、直接叩ける武器もあったほうがいいかもしれない」


『そうとなれば早速武具屋へ向かうぞ。』


でも、もう夕方だよ?

明日でもいいと思うんですが。


『オーダーメイドにすればいいだろう。そうすれば明日の朝にはできているさ』


そうだな、それにしてもオーダーメイドという選択肢は思いつかなかった。

とにかく街で1番大きい、冒険者ギルドと提携している武器屋に向かおうと思う。


◆◆◆


「いらっしゃいませ、お客様。本日は何をお求めで?」


燕尾服を着た長身の男が派手な装飾の入った防具を着た冒険者にすり寄るように寄っていく。


「わかるだろ、武器だよ武器。じゃなかったらここに来ないだろ」


「そうですか、それでは優先的にご紹介いたしますので応接室でお待ちください」


なんか高圧的な客もいるもんだな。

とりあえず今は店内で武器を見ているのだが…


『ここはダメだ。どれも大量生産品、オーダーメイドにしたってたかが意味のない装飾がつくぐらいだ。別の店を探すぞ』


「ちょっと静かにしてろよ、色々聞いてみるから」


すると先ほどの冒険者の接客を終えた長身の男が近づいてくる。


「すみませんが、お客様に似合う武具は当店にはございませんのでお引き取り願えますか?」


「いや、別に似合うとかじゃないんだ。ただ武器のオーダーメイドを…」


「せっかく優しく言ってやったのに分からんのか。貴様のような貧乏人にあるものはこの店にないと言っているんだ」


「え?それは…」


「貧乏人がいるとこの店の品位に関わる。奥の方に貴様らのような貧乏人が使う武具屋があったはずだ。そっちに行け。ここまで親切に教えてやったんだ、感謝しろよ」


驚いて空いた口が塞がらないが、まあここはそういう店ということだ。

メフィストも品質は良くないと言っていたので教えてもらった武具屋に行こうと思う。


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