第6話 鍛治師との出会いとある手紙
「ごめんください」
「なんだ、客か。久しく見なかったが何の用だい」
「武器を見繕っていただきたい」
「あぁ、武器ならその箱に入ってるよ」
そう言われて、箱の方を見ると錆びついた剣や槍などが無造作に詰め込まれていた。
「ここから選ぶのかぁ」
『ここが貧乏人向けの店とは、あの店員も見る目がないな。まあ、私に任せておけ』
と、メフィストは訳のわからないことを言っている。
すると突然メフィストが俺の体の支配権を乗っ取り、
『時に店主よ。この店に悪魔に効く武器はあるかね』
「…あんた、何もんだ?それに、店に入ってきた時とだいぶ雰囲気が違うようだが」
『メフィストフェレス、と言えばわかるかな』
「嘘をつくな、奴は全知の書の中だ」
『これを見れば嘘をついてるかわかるんじゃないか?』
そう言って冒険者ライセンスを差し出す。
「エルマイト…あながち嘘じゃあなさそうだな。そうか、何代ぶりになるのかの。新たな核術師に出会うのは。わしの名はアルム。鍛冶師をしている」
『信じてもらえたようで何より。それでは注文をしたいのだが、これは本人がしたほうがいいだろうな』
と、突然体の支配権が戻ってくる。
そして、今まであったことを軽く話した。
「事情は分かった。わしがお前さんに合う武器を打ってやろう」
実は目をつけている武器があるのだが、
「脇差って作れるか?」
「ほう、なかなか通なものを選ぶな」
「刃渡りとしてはナイフよりも長いがショートソードより短いくらいで頼む」
「ほう、間合いを錯覚させるためか?」
「まあそういうことだな」
「とすると、人間と戦う予定があるのか?」
「そうだ」
「あんた、東洋に行った経験は」
「ないな」
「そんなら刃は両刃にしといてやる。反りもなくしちまうがいいか?」
「使いやすければ」
一応父から軽く剣術は教わっているものの、スキルとして覚醒するまではいかなかった。
ちなみに脇差は、全知の書で調べて知ったものだ。
武器については朝から考えていたからな。
ということで注文を終えた。
代金はいらないらしい。
今は手持ちが少ないし、出世払いで払おうとは思うが。
◆◆◆
そうしてできていた家に戻ってくると、机の上に一つの手紙が置いてあった。
封印のこの紋様…見たことある気がする。
「開けてみるか」
そう言って封を切ると中の紙が飛び出し、話し始めた。
『アナタはその才能を認められ、魔術学校への編入が決定いたしましタ!この家と地下室ごと学校の近くへ転移させるので用意ができ次第この紙にサインをお書きくださイ!』
ま、魔術学校!?
魔術学校と言えば王国の王都にある名門の学校であるが…
そんなところに通う学費はない!!
『学費に関しては必要ありませんヨ。あと、この編入は強制ですので拒否はできまセン!』
「家はどうするんだよ…土地代がかかるだろ」
『土地はすでに確保してありまスのでご安心くださイ!』
何が何でも連れて行く気のようだ。
『王都に無料で住めるなら行けばいいではないか』
「まあ、そうだよな」
ちなみにこの街ミタルはタムクレア王国のはずれの方にある小さな街である。
『スデに冒険者ギルドの方には話をつけてありますのデ!』
行動のお早いことで…
『向こうに着き次第校長とお話ししていただきたいのですガ、明日の朝でもよろしいですカ?』
「分かったよ、じゃあ今サインを書いちゃおうか」
そう言ってペンを取り出し、手紙に署名する。
『ただいまヨリ!アルター・エルマイト様ハ魔術学校の生徒となりまス!皆さん、拍手ヲ!』
すると、目の前に拍手をする大人達の姿が現れた。
「我々は魔術学校の教師だ。これからよろしく頼むよ、エルマイト君」
と1人が言う。
すると、
『転移を行いまス!衝撃に備えてくださイ!』
と言われ、一瞬の浮遊感ののちに衝撃を感じる。
外に出てみるとそこにあったのは、夜の王都の街並みだった。
この時から、魔術学校で学ぶ2年間が始まるのだった。
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