第19話 結局ギルドで待機する俺
リドルとミクが俺たちを庇いながら攻防を繰り広げる中、プチパニックの俺は《転移》を使えることを思い出して、ギルドに妊婦さんと飛ぼうと考えたけど、ヒョウガが魔力に慣れてない普通の人間で妊婦じゃ無理が出るっていう。
悶え苦しむ妊婦さんをヒョウガに乗せてもらってギルドに戻る事にした。
あの騒々しいギルドに妊婦さんは辛いかも知れないけど他に行く所が無いし、俺は産婆さんになれないから。
「リドル!!この人ギルドに運ぶ!!」
「っわかった!!」
前方をミクが後方をリドルが守ってくれて苦しむ妊婦さんとギルドに入った。
ヒョウガが大きいままだけど、俺が妊婦さん抱き上げられないし、仕方ない。
中に居た冒険者や受付の人が魔獣かと警戒しちゃったけど、俺を見てヒョウガの首元見て。背中の妊婦さんを見つけて。
冒険者のおっちゃん達が妊婦さんを丁寧に受け取って下ろしてくれた。
「大丈夫か?」
「・・・子供が・・・ぅ、迷子なんです・・・あぁ・・・」
ん?もしかしてさっきの子供かな?
受付さんに目を向けたらサッと奥に入って子供を抱いて戻って来た。先ほどぶりの子供は顔が涙でぐちゃぐちゃで泣き疲れて眠ってしまったようだ。
唸っている妊婦さんの側に子供を見せれば、妊婦さんがほっとした顔をしてまたお腹を抑えて顔を歪める。
「ああ・・・ジーン、良かった良かった・・・」
妊婦さんの子だった。逸れちゃった子供を探して一人でいたんだな。
ところで妊婦さんは臨月ってやつか?今医者いるんかな?
受付さんが指示して妊婦さんを奥に運ぶ事になって。
「ツバサ、一人だと外に出ちゃうみたいだし無茶するからもうギルドに居てくれ。俺たちは外で警戒してくる」
リドルが釘刺してミクと出ていった。
くそ~。ケモ耳イケメンかっこいいぜ。
ギルド内を見てると怪我人がたくさんいる。これ俺が調薬で薬出したり、ヒールで治すのってダメなのかな?
『だから普通の子供が持ってない力を使ったらダメだって!!』
でもさ、緊急事態じゃん?
『聖人とか言われて教会に監禁されても良いならやれば?』
マジなの?チート持ちってそんな目に遭うの?
『ジャックのところでこっそりポーション作るくらいなら良いんじゃない?』
それだ!
ジャックさんのところに走っていって、ドーンと突撃。
飛びついて持ってない耳元でゴショゴショっと内緒話を。
「・・・それは正直ありがたいが大丈夫か?」
「ジャックさんのヘソクリみたいな扱いで・・・無理?」
小声で相談。
そっと抱き直されて隣の部屋に。
ギルド長の個室ー!って言ってる場合じゃなかった。
「たのむ。出来れば低級、中級ポーションで頼む。それ以上だと隠せない」
薬草をこっそり持って来てもらって、スキル《調剤》を発動。ヒールのが楽な気するけど、監禁コース一択は嫌だ。
仕上がったポーションをジャックさんがどんどん運んで行く。
薬草が切れたのでお役目終了。
お疲れな感じのジャックさんが戻って来たのでちょっと出来心で〔赤マ○シ〕の栄養ドリンクをあげた。漲れ!!パワー!!
下半身じゃないよ?
「・・・マズ!」
おや、味が苦手だったか。
ずっとガヤガヤしてる中、女の人の叫び声が聞こえて、子供のギャン泣きも響く。
ジャックさんに持ち上げられて一緒に連れてって貰うと、
「男はお呼びじゃないよ!出てけー!!!」
って、ギルドの食堂のおばちゃんに怒られた。妊婦さんが産気づいたっぽい。
他のおっちゃん達もオロオロしながらウロついている。外回り行かないのか?
やれる事がないから、元に戻っているヒョウガと受付さんの側に居させてもう。
外の魔物の鳴き声も大きくなって来て、いよいよ限界を迎えそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます