第18話 狂乱の町

 リドルとミクの駿足でギルドまで門の外にいた他の冒険者達より早くギルドに到着した。

 冒険者達が配置や武器の確認したり慌ただしく動いてる。

 こんな田舎の町じゃワイバーンの群れなんて来られたら持たない。


 Aランク1組とBランク2組が既に向かっているらしいけど、厳しい状態らしい。

 Cランクは外壁周りで応戦、以下は住民を非難させたり小物討伐を指示された。


 リドル達も町の中で待機、下級魔獣だけ討伐するよう言われて。

 俺だってやれるのにって言う気持ちが湧いて来たが、棲家に送られて結界を強化するよう言われて押し込まれた。


「ヒョウガ、俺は出たい」

『ダメだ』

「魔獣が突破して来てみんなヤラれたら俺一人で生き残るのか?」

『・・・』

「せめて町の子供達くらいここに匿えないかな・・・」

『ここの家の結界は個別登録してある仲間しか入れない仕様だ。町の人間はは入れない。誰でも守れて何も進入できないなんて便利な魔法なんて無い。聖女でも完全には出来ないんだ』

「俺、冒険者になりたくて色々貰ったのにちっとも使い道ないじゃん」

『ミカエラさまを恨むのは仕方ないけど、ツバサはまだ戦い方を学んで無い。庇護されるべき子供だ』


 クネクネはいつか絶対ぶっ飛ばす。

 俺は10歳からって言ったんだよ!


 外から魔獣の雄叫びや人の逃げ惑う声が聞こえて来た。魔獣が町に入って来たんだ。


「グギャオォオオゥー!!!」

「ゲッッゲッ」


『まずいな、だいぶ押されてる』


 どれぐらい被害出てるんだろう。

《感応探知》


 意識を飛ばして目線を町から外に向かって広げていく。

 ワイバーンはまだだけどワーウルフやマーダードッグが来てる。


「キャァー」

「そっちに逃げろ!!」


 緊迫した状況が視えてるのに何も出来ないなんて。


「・・・ヒョウガ!!子供が1人で逃げてる!」

 すぐそばの道でまだよちよち歩きの子供が泣きながら必死に逃げてる。


「こりぇ助けなかったら俺、10歳になっても冒険者になんてなれないよ!!」

 外に向かって走り出す。

『ツバサ!!』

 

 必死に走って子供を抱き上げ・・・れない・・・。6歳児、3歳児?抱えられず。

『ツバサ!!無茶苦茶するな!!!』

 追いかけて来たヒョウガが前世のジャガーみたいな大きさに変身。何それ、カッケェ!

『2人で乗れ!!ギルドに行くぞ』

 乗りやすい様に伏せてくれて何とか子供を持ち上げて自分も乗った。


 ・・・ヒョウガ、これでギルド行ったら魔獣と間違えられないか?


『この神々しい俺をみて魔獣とか言いやがったらこの爪で下ろしてやる』


 子供はまだ泣いてるし、少し離れたところでは人の叫び声がしてる。

 正直平和ボケしてた日本人な俺はチビリそうだ。


 ギルドに入る前にヒョウガが変身を解いたけど見ちゃった奴らはギョッとしてた。すまん。

「ツバサ!!外に出るなと!」

 ジャックさんが怒鳴って来たけど、子供を見つけて。

「どうした?」

「1人で逃げてたから」

 子供はゴツいおっちゃんばかりのギルドで固まっちゃってる。

「1人でかよ・・・」


 受付のお姉さんが子供を引き取ってくれて2階につれて行った。


「ツバサ、良くやったな」

 デッカい手で頭をグリングリンとされた。

 周りは出たり入ったり大騒ぎなんだけどな。


「お前は棲家に帰った方がいいんだが無事に帰れるか?俺は外壁まで大物のが来たら出なきゃいかんからな」


「帰る」


 ここにいても邪魔だしな。


 ヒョウガと警戒しながら来た道を戻る。

 数が多すぎて門を突破されて小物でもそこらで遭遇しちゃって冒険者達が疲弊しているのがわかる。

 住民はできるだけ領主の住むマルカ街まで逃げてるらしい。


 感知に引っかかってる飛行型の魔物がかなり近い。

「雷撃とかしたらダメ?」

『命中度が絶対じゃないからダメ。二次被害が出る』

 それ、どこのどじっ子女神(自称)だよ!


『今のお前が不相応な力使ったら王家か教会に強制で連れて行かれるぞ』

 ・・・マジか。

『せめてリック達がいて隠れ蓑にできる奴がいる時なら良いが今はダメ』


「ヒョウガ!女の人が倒れてる、ワーウルフが襲ってる!!」

『何でまだ1人で残ってるんだ!!』

 ヒョウガが威嚇しながら襲う。

 俺は女の人を逃がそうと体を起こすのを手伝おうとしたが妊婦さんで。体が痛そうで動かせない。

『っ!』

 魔物が数匹増えて来て。ヒョウガが再びジャガーモードに変身して応戦しているけど、ここから妊婦さんを動かせないのは困った。


 (ヒョウガ・・・どうしよう)


 妊婦さんを庇ってシールドを張ったけどこのままじゃ赤ちゃんが・・・


「ツバサ!!」

 いきなりザンっと足音がして尻尾が視界に入った。

「リドル!!ミク!!」

 俺中身35歳だけど泣いた。


「無事か?何で外にいるのかは後で聞くからな!!」

 

 リドルがどんどんリックに似・・・ホロリ。


 次々襲ってくる魔物を2人が瞬殺していく。つぇえ・・・。


「っうぅ!!」

 女の人が急に苦しみ出して、額から脂汗が一気に出て来た。


 ふえぇーーー!?!奥さーーーん!!!?

 救急車ーーーーーーー!!

 い、医者ーーーー産婆さーーーん!!


 緊迫した戦況で別の意味でパニクる俺。

 どうしたらいいの??



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