第9話 エイミーが天使のような子供を連れてきた リック視点
三日前から森の魔物の繁殖や異変を探る定期調査に駆り出されて、特に問題は無さそうだから次の地点に移る予定でいた。
一緒に調査に来ていたCランクのエイミーたちは少し前に仲間が抜けてパーティ解散となった女3人組だ。腕も良いし、うちのメンバーに妙に騒がないので手の足りない時は組んでいる。
近くに湖があって汗を流したいと言い出したので少し離れた所で休憩していた。
しばらくして戻ってきた時にエイミーの腕の中に子供と雷獣が居て驚いた。
こんな森の奥、しかもCランククラスの魔物が出る可能性がある場所で子供だと?
エイミーたちに水浴びを許可したのはそれなりの実力とサイラスの感知があるからだ。
「その子供はどうした?」
「何だぁ?誘拐してきたのか?」
エイミーを揶揄っている間にガルムがクララに聞けば人買いに遭ったことや逃げたこと、馬車で元の場所からかなり遠くまで来たらしいこと、体に虐待の後は無かったことを説明された。
子供の足で動ける範囲でこの辺りに馬車が通れるような場所はない。
エイミーたちも承知しているだろうが子供から聞いた話のみで深くは追求してないようだ。まずは保護が最優先で良い。
しかしここらでは見かけないほど可愛い見た目の子供だ。ふくふくした頬や指。キラキラ光る柔らかそうな金の髪。
誘拐されたって言われてば納得できる容姿をしている。
着ている衣服も靴や鞄も貴族のものと言っても良い高価なものだ。
だが人買いという話はおそらく嘘だろう。
アルルの町に戻ってギルドに調査結果とツバサの事を報告。
ギルド長のジャックに話をすれば、当然馬車の話を怪しむ。鑑定の結果も隠蔽したがわかりやすく簡易な物しか出てこない。
お互い分かってはいたがまずはツバサの信頼を得る事が先決だ。
こんな目立つ子供を雷獣付きで保護したのだから、表向きには捜査をしないわけにもいかない。ツバサの言い分通りに人買いから逃げて来たところを近くの草原で保護したことに改竄して近隣のギルドに報告。本人は詳しいことを知らないで通すことになった。
数日で色々ボロを出して諦めたのか、自分が転生者だと告白して来た。
証拠?で出してきた黒い飲み物は心底驚いた。爆発物かと。
ヒゲと喉仏の神と雷と狩猟の神にここへ連れられたと言う。
ヒゲと喉仏の神は聞いたことはないが、雷と狩猟の神は冒険者の中では剣神と並ぶ人気の神様だ。
その神が俺にツバサを託すと言ってくれたらしい。光栄なことだ。
エイミーの元に出てしまったのはエイミーの執念のような気がする。
話の途中、他のメンバーも揃っていることに気がついたが、ツバサが色々やらかすのは目に見えていたし、こいつらは変わり者だが信用のできるメンツだ。ツバサを守るためにも知っておいた方がいいとそのままにした。
そのあと色々な飲み物を出してくれてやっぱり不思議な味だったが炭酸と言うのは刺激的で良いものだな。
ハートの分が酒だったのはハートの見た目が綺麗で酒が似合いそうと意味のわからないものだったがツバサはジュースと変わらんのにって呟いていた。
エイミーを悶絶させた赤い液体と粉はやばい匂いがしたがサイラスはうまいと喜んでた。謎だ。
ツバサがガルムに手伝わせて作ってくれた飯がまたうまいんだ。最初にコーラじゃなくても別の世界のものいくらでもあったのじゃ?と思うが何もかも上手くてどれを出そうか迷うのはわかった。
まだ短い付き合いだが、ツバサは見た目の愛らしさで誤魔化されるが結構大雑把で口が悪い。5歳にしては頭の回転も良さそうだしな。見た目通りの年齢では無いのかもしれない。
しばらくは子供らしく暮らしてほしいところだが本人は色々やってみたいようだ。
まぁ俺は腕が鈍らない程度に仕事を減らして付き合うかな。
目を離したらエイミーのように可愛さに騙されて誘拐されてしまうくらいに可愛いからな。ヒョウガもいるがやはり心配だ。
しかしみんなそれぞれ好き勝手過ごしていたのに夕飯時には全員が棲家に揃うようになった。女の家に渡り歩いているサイラスさえもだ。うまい飯ってやつは凄いな。
まぁ飯の後消えてるが。
数日顔を見ない事もザラにあったのが連絡も報告もしやすくなったのは良かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます