第2話  そのポジションになりたかった

 ふわふわ~むにゅむにゅ~な夢の世界。


 ふわーん、ぽよよーん。


 なんて言うかしゅごい!

 お姉さんたち!俺じゃなかったら逆セクハラなんだからね!!


「ツバサくん、じゃぁ人買いから逃げてきたのね?」

「どこから来たのか国の名前も親の名前もわかんないの?」


 5歳児が森の中で一人っきり。

 怪しすぎて質問責め。仕方なし。


 しかし俺、この世界に身寄りなし。


 異世界転生ものの定番的身の上にしてみた。多分!


 あと5歳児だからめっちゃ噛む!

 『あい!』『そうにゃんでしゅ』って!

 むちゃくちゃ羞恥プレイよ!!


 お姉さんたちは、「可愛い~!!」って言ってくれるけどさ。

 彼女たちは剣士のエイミー、弓使いのクララ、魔法使いのララァ、Cランク冒険者でこの森にはAランクパーティの人達と定期調査に来ていて、休憩中に水浴びしていたらしい。


「じゃぁリックに相談して近くのアルルの町に行きましょう!」


 魅惑のふわぽよタイムは終わりで、脱がされた服を手に取ったら、マジックバッグの影に黒い子猫?

 ん?

 むちゃくちゃ機嫌悪そう。


 そういえばエンファスさまが雷獣付けてくれるって言ってたような?

『そうだよ!いきなり人間がいたから隠れてた。大きいとバレるから小さくなったよ』

 んん?話せる?

『念話だよ』

 ほー!

『早く服着たら?』

 はっ!?丸出しのままだ!


 後ろでエイミーが「プリティなおちり♡」とか呟いてる。やばいのがいる!!

 ララァが服を着るのを手伝ってくれて雷獣を見つけた。

「あら?何でこんなとこにパルーが?」

 パルー?

『猫型の少し珍しい希少獣だよ。一緒に捕まってたって言っといて』


「いっちょにつかまっちぇた!!ちゅれてきちゃよ」

 くっ殺せ!!


「まぁ!かなり大掛かりな組織だったのかしら。報告しないと・・・」


 こうして黒い子猫を抱っこしてる幼児はお姉さんたちに連れられてAランクパーティの人たちの元に合流。


 赤い短髪のイケメン、金の長髪のイケメン、灰色ツンツンヘアのガチマッチョなゲームにいそうな主人公チームがそこに!!!


 俺はせめてマッチョの人になりたかった。

 理想は赤い人!でも幼児になるくらいならフツメンで良いから活躍出来そうなマッチョに!!


 絶対に許さないからな!?

 あの青髭と喉仏のヤツ!!!!

 ハゲれば良いのに!!!!!!!!


「おう、何だぁ?ついに誘拐してきたのか?」

 やっぱエイミーはやばいんだ!ショタの人か?

「違うわよ!一人でこんなとこいる子なんて普通いないでしょ?何でそんなおかしい扱いになんのよ!リック!」

「1人でいただと?」

 リックって呼ばれたのは赤いイケメン。

「何か人買いに捕まってたのをパルーと逃げ出してきたんだって」


「人買いだって?」

 イケメンたちが一気に怖い顔になった。

「でもだいぶ馬車で離れた場所まで連れてこられてて元いた国もわかんないんだって」

 痛ましいものを見る目で見られたよ。

 嘘ついてごめん!でも説明出来ないから!変なオネェに失敗されてここに来たって!


 リックは剣士、Aランク冒険者で《竜の瞳》ってパーティのリーダーって名乗ってくれた。金髪の人はサイラスで斥候、マッチョの人は、ガルムで盾使い。他に3人いるらしい。

 そして

「ちゅばしゃでしゅ」って!!

 <つ>と<さ>が言えない!!!

 ガルムが普通に

「チュバシャかぁ」

 ってニコニコしてるんだ。ちっげぇーー!

「違うよ!ツバサくんだよー」

 水場で散々聞き取りしてくれて理解してくれてたエイミーが訂正してくれる。

 怪しいのに一緒に水浴びしたのは虐待の痕がないかの確認もしてたらしい。本当かな?

 

「ツバサか、変わった名前だなー」

 名前とか深く考える前に魅惑の世界に招待されちゃったんだよ!悪かったな。


「で、パルーは飼うのか?名前付いてるのか?」

 ぬお?

『・・・早く名前つけろ』

 んんん・・・黒いおっきい猫・・・

 豹・・・ヒョウ・・・ヒョウガ・・・

 んーヒョウガでいい?

『何か単純っぽいけどまぁ、いいよ』

 ありがとう。

「ヒョウガ!でしゅっ」


 もうさ、何この噛み具合。

 「おれ」も「おりぇ」になるから「ぼく」って言うしかない。

 名前、こっち風にしたら良かったな。



「さて、とりあえずギルドに報告だな。町に戻ろう」

 

 休憩に使ってた荷物をさっと片付けてさっと俺を抱き上げてくれた。


 やっぱ俺、リックみたいなカッコいい冒険者になりたかったよ。


 あのオネェが予定してた保護者はリックだったことをヒョウガが教えてくれた。


 結果オーライってことはないからな!

 アイツはいつかボコるから!!

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