神々も知らないこと

濡羽 天使羽

第1話

 この世界にはまだ誰も知らない秘密がある。まだ誰も知らないからこそ秘密となり得るのだが。


 秘密と言っても大それたものではない。


 未発見の植物、新種の動物、人の体の仕組み、ゴールドバッハの予想 6以上の任意の偶数は、2つの奇素数の和で表せるか、など。


 身近なものから専門的なものまで。


 ここではその秘密について話そう。





 そう、そうれは古の昔神々がまだ人という生物を創る前の話。ある神が言った。


「世界の定義とはなんだと思う?」


 神々はそれぞれの意見を言った。


 ある神は「世界を世界と思ったとき」と抽象的なことを言い、ある神は「生き物が生きていく場所」と言う。


 神々でさえも『世界』というものを知らなかった。


 そこにある神は言った。


「世界というものを創ってみてはどうか」


 と。


「世界というものが何かを知りたければ自分が思う世界というものを創ってはどうか」


 と。


 「それもそうか、私たちは神なのだから創ればいいのだ」という結論に至った。そしてそれぞれ世界というものを創ることにした。


 その結果たくさんの『世界』が生まれた。


 その中でも似通った『世界』が生まれた。地球と火星のように。


 地球は〝人〟という生物が生きているが火星には〝人〟という生物はいない。しかしそれ以外はほとんど似ている。大きさ、空気というものがある、水がある、という具合に。


 他にも地球という〝星〟1つを世界と見做すのではなく、天の川銀河のような〝銀河〟を1つの世界と見做した神もいた。


 それぞれの神が適当にあちこちに世界を創った。その結果、『世界』同士がぶつかって爆発して弾け飛んだり、反対に合体することが起きた。


 その『世界』を創った神々は最初、喧嘩をしたがそこら中で世界同士がぶつかっていていちいち喧嘩をするのが不毛だと思ったのか次第に違う世界を新しく創るようになった。



 そうして『世界』をたくさん創ったが誰1人として『世界』とは何なのかわかるものはいなかった。


 その結果、


「世界を発展させてみてはどうか」


 ということになった。


 発展と言ってもさまざまな方法がある。生物がいない『世界』を創ったのならば、『世界』の広さを広げてみるとか、生物がいるならば、『世界』の中に他の種類の生物を創ってみたりとか。


 中には変わった発展をさせた神もいた。


 他の神に「あなたの創った『世界』の生物と私が創った『世界』の生物を互いに認知させよう」と提案したのだ。


 他の神はそれによって何が良いのかと問うと


「互いに認知するとその生物たちはどう変化していくのか見てみたくはないか」


 と答えた。そんな考えがなかった他の神はこの提案を了承した。


 そうしてまた色々な『世界』が生まれた。





 そうして数十万年か過ぎた頃1人の神が言った。


「『世界』というものに答えというものは存在するのか」


 と。


「『世界』というものは何も答えが1つなのではないのではないだろうか」


 と。


「『世界』というものがたくさんあってもいいのではないか」


 と。「確かにそうだ」と考えた神々は新しく『世界』を創るのをやめた。その代わり、自分が創った『世界』がこれからどうなっていくのかは見届けよう、ということになった。


 それからまた数十万年が過ぎた。そんな長い間見守り続けるとその『世界』にも自分が創ったということも相まって愛着が生まれる。


 しかし、神たる自分がいると『世界』に影響を及ぼしかねないと思った神々は惜しみながら『世界』の外に出ることにした。


 そのときにいろいろなものを置いてきた。それは〝謎〟だ。


 謎は神々自身もわからないことだ。『世界』のこととか。謎が全て解かれたとき、神々も『世界』というものがどういうものかわかる。


 謎があり続けるということは神々も『世界』についてまだ全てを知っているわけだはないのだ。





 今でも『世界』にはまだまだ知らないことがたくさんある。でも、知らないからこそ世界は存在するのだ。神々が『世界』というものが何かわかるときまで。

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