盗作

第1話

ボクは小説家だ。

だが、この事実には何ほどの驚異性も

希少性もない。

何となれば、ボクは一冊小説を電子出版しているが、

何の恩恵を被ったことも、一円の印税を

受け取ったこともないからだ。

もちろん何らかの見返りを求めて書いて

いるわけばかりなのではないけれども、

面妖な話ではある。

ボクは鬼平幸之助というペンネームで小説を書いている。

好きな時代劇の主人公の名前と、尊敬する

電機メーカーの創業者の名前をくっつけたものだ。

ボクは主に恋愛小説を書いている。

特に理由はないのだけれども。

（書きやすそうだというのが当初の目算だったのだけれども、

実際はそうではないのかもしれない）

ただ、渡辺淳一郎先生の言葉を借りれば、恋愛にいちばん

興味があったからということになるのかもしれないが。