SS-2 ♂ 変わらず3人でいっしょに ♀
「り、龍斗っ! きいてくれ……!」
春。学校の屋上。
まだ淫魔の首飾りを手にする前――【男の身体】だった頃の
「お、俺……愛音に、こ、――〝告白〟を、されたんだっ」
龍斗は驚いたように目を開けた。
「あーちゃんが、ミナタに?」
こくり。湊多は頷いた。
「…………」
龍斗は顎に手をあてて考える。
驚いた。いや、もちろん。
もうひとりの幼馴染――
当然だ。
愛音は、龍斗にとって〝とくべつなひと〟だったから。
それくらいは分かる。
けれど十数年間
「ど、どうしよ、俺っ。急に、そんなこと言われても……愛音とは、ずっと
そんな湊多の様子をみて『ああ、やっぱり』と龍斗は思った。『やっぱりミナタは、どこまでも無邪気で――どこまでも
「ばかで、かわいい、親友――」と龍斗はつぶやくように言った。
「え? な、なにか言ったか?」
「ん、なんでも、ない」
目をまたたかせている湊多に向かって、龍斗は言った。
「で――ミナタはどうするつもりなの?」
「そっ、それが分かんなくて……龍斗に、相談してみた」
湊多は照れるように視線を泳がせて言った。
龍斗はすこし息を吐いてきく。
「ミナタは、あーちゃんのことはきらい?」
「そ、そんなわけない!」と湊多は力強く答えた。「愛音のことは、もちろん――
龍斗はぴくりと眉を跳ねさせて、意味深げな視線を送った。
「ふうん。
「当たり前だろ! 俺は愛音のこと、すきに決まって――あれ?」
湊多はそこで気づいたような顔をする。
「ん。だったら――そのきもちを、そのまま、あーちゃんに伝えてあげればいいんじゃない?」
と龍斗は言った。あくまで冷静をよそおって言った。
「そ……そっか。そうだよな」湊多は言い聞かせるようにして続ける。「愛音は、俺に〝すき〟って言ってくれて。俺も、愛音のことが〝すき〟で。だったらなにも、迷うことはないのかもな」
龍斗はすこしの間のあとに頷く。
「そう。べつにとくだん、まようことはない。ミナタは、
それでも湊多はどこか気まずそうにして、頭をかいた。
「あ……でも。そうなると、龍斗は、」
「?」龍斗が首をかしげる。
「龍斗は、その……いいのかよ? 俺たちが、
――べつに。ボクのことは気にしないで。
本当の親友だったら。
本当にふたりのことを
――ボクのことは……
そんなふうに理想の親友としての言葉を答えればよかったのだろう。
だけど。
「ん、べつに。――これからも、
龍斗の口から出てきたのは、別の言葉だった。別の言葉。ずるい感情。
「そう。べつに、ふたりの関係が変わっても――3人の関係が変わらなかったら、それで」
龍斗はわざとらしく悲しげな顔をしてつづける。
「それとも――ふたりがつきあったら、ボクはもう、仲間外れ?」
「ま、まさか!」
と湊多がすぐに否定してくれることを。
龍斗はどこまでも理解していた。
「仲間外れ? そんなこと、するハズないっ! 約束しただろ? 俺たちは――俺たち3人は、ずっと仲良しでいっしょだ」
そこで湊多は
龍斗はすこし間を置いてから、手を開いて『パー』の形にして出した。
「ん、ボクのかち」
「っ! じゃんけんしてるわけじゃねえ! ……ったく。お前は相変わらずだな」
屋上には春特有のうららかな日差しが満ちていた。
空は微かに白く
どこかから吹き上がってきたであろう桜の花びらが一枚、ふたりの間に落ちた。
「それじゃあ俺、行ってくる……!」
「ん、行ってらっしゃい」
今度はきちんと親友らしく、龍斗は言った。
「――
「……! へへ、さんきゅな」
湊多はひとつの
「俺、龍斗に相談してよかった。これからも幼馴染3人、
龍斗は一瞬口をひらいて、何かを言おうとしたあと――
その言葉を飲み込んで、唇の端をあげた。
「ん。これからもよろしく。変わらず――仲良しのままの3人で」
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昔のふたりのエピソードでした!
果たして仲良しのままでいられたのでしょうか……(とぼけ顔)
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