幼馴染も最強へ

 俺はライザにスキルを付けるため、彼女のステータスを出現させた。


「さて……ライザ、どんなスキルがいい?」

「う、うん! そうだね……できれば、私の職業ジョブを活かせるスキルがいいと思うんだけど……」


 ライザの職業ジョブ、なあ……。

[魔砲使い]はメルエラさんも初めて見る職業ジョブだって言っていたし、どれが最適なのか、よく分からないんだよなあ……。


「ふむ……これまでのライザ君の戦闘スタイルを見ると、[魔法使い]と[弓使い]の中間のようなイメージがあるのだが……」


 なるほど……確かにこれまでの戦い方を見ると、[魔法使い]のような派手な魔法ではなく、むしろ魔力を凝縮させて高密度の魔法の弾丸を発射するほうが近いかもしれない。


 なら。


「付けられるスキルの上限が八つであることを考慮すると、使える魔法の属性を限定して、空いている枠は[弓使い]と[魔法使い]系の補助スキルを同じバランスで入れてみようか」

「うん、私もそれでいいと思う」


 ということで、俺とライザは表示されているスキルを眺めながら、ああでもない、こうでもないとやり取りをして三時間。


 ―――――――――――――――――――――

 名前 :ライザ(女)

 年齢 :18

 職業 :魔砲使い

 LV :70

 力  :SS

 魔力 :SS

 耐久 :SS

 敏捷 :SS

 知力 :SS

 運  :SS

 スキル:【砲術(神)】【一斉掃射】【並列思考】【炎属性魔法(神)】【聖属性魔法(神)】【状態異常無効】【物理耐性】【魔法耐性(全属性)】

 残りスキルポイント:66137

 ―――――――――――――――――――――


 お、おお……ライザの能力、とんでもないことになったような気がする……。

 もうこの時点で、メルエラさん達を除けば、世界最強はライザなんじゃないだろうか。


「だけどライザ、どうして【聖属性魔法(神)】を選択したんだ? 最初からあった雷属性や土属性の魔法系統のスキルにしたほうが使い慣れているし、俺としてはそっちのほうがよかったと思うんだが……」

「あ……う、うん、その……」


 どういうわけか、ライザは少し言いにくそうにもじもじしている。

 というか、ライザと【聖属性魔法(神)】自体、ずっとそばにいた俺から見て特に思い入れや関りがあるとも思えないんだが。


「フフ、ゲルト君も鈍いな。ライザ君は、君が怪我した時のことを考えて、回復魔法主体の【聖属性魔法(神)】を選んだんじゃないか」

「あ……」


 そ、そうか……ライザは、俺のために……。


「ラ、ライザ、その……ありがとう……」

「はわ……う、うん……」


 俺はライザの想いが嬉しくて、照れつつも彼女の手を優しく握った。


 ◇


「それで、この後は黒死の森へ向かうんですか?」


 ギルドを出て歩くメルエラさんに、俺は尋ねた。

 おそらく、魔物相手にライザのスキルを試すんだろう。


 そう思っていたんだけど。


「いや、そんな・・・遠くまで・・・・行かないさ」

「え……?」


 黒死の森は街のすぐ隣にあるから全然遠くないし、何なら毎日のように通っているんだが……。


 すると。


「さあ、着いたぞ」

「ここは……」


 メルエラさんに連れられてやって来たところは、街の外れにある大きな広場だった。

 しかも、その中央にいるのは……バルザールさんとガスパーさんか?


「フォフォ、待っておったぞい」

「おう! こっちじゃ!」


 ふむ……二人も次の訓練に加わってくれるということで間違いないんだろうけど、だったらこんな広場ではなくて黒死の森のほうがよかったんじゃないだろうか。

 特にガスパーさんの職業ジョブは[大魔導師]だから、こんなところで大規模魔法なんて放ったりしたら、ただでさえ小さなラウリッツの街そのものが消し飛んでしまうかもしれない。


「ということで、訓練も第四段階……いや、これが最後となる」

「これで、最後……」

「そうだ。この訓練でコツをつかめば、あとは君達だけでいくらでも強くなれる。それこそ、私達よりもだ」


 そうか……俺は、いよいよ英雄レンヤの強さに迫ることができるんだな。


「ゲルト、頑張ろうね!」

「ああ!」


 俺とライザは、拳をコツン、と合わせて気合いを入れた。

 これが終われば、俺はもうあんな光景・・・・・を繰り返さずに済むんだ。


 ライザを……大切な幼馴染を、もう二度とあんな目に遭わせてたまるか。


「フォフォ、良い目じゃ。お主はそれがしが鍛えてやるぞい」


 俺の傍に来たバルザールさんが、からからと笑った。

 そうか、この第四段階の訓練で俺を指導してくれるのは、バルザールさんなんだな。


「フフ、ライザ君は私とガスパーが教えるぞ」

「うむ。必ずや、ゲルトを尻に敷くくらい強くしてみせるわい」


 ライザには、あの二人が指導につくみたいだ。

 だけどガスパーさん、ちょっとそれはどうなんでしょうか……。


 まあでも。


「よ、よろしくお願いします!」


 ……既に俺は、ライザには絶対に頭が上がらないんだけどな。


 真剣な表情で深々とお辞儀をするライザを見つめ、俺は頬を緩めた。

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