第二話 運命

センディアル王国の【王都センティオ】では年一回の国家魔導士試験こっかまどうししけん1週間前からお祭り騒ぎになり、試験は毎回20倍の競争率になる為、3日間の日数を掛けて行われる。

ある者は既に泥酔状態でいすいじょうたいで、ある者は音楽を奏でて、ある者は料理を振る舞っていた。

試験を受ける者は当日の受付で番号を貰う者は当日受験者、推薦状を貰っている者は推薦者と言われている。推薦状を貰うには御三家の王族の家系の貴族の当主か領地を治めている七領地の当主か全12カ所ある冒険者ギルドのギルドマスターからしか推薦状は発行出来ない。その為、毎年22枚しかない推薦状を旅路の途中で強奪する事も過去に結構あった。

しかし、推薦状の強奪を防ぐために身分証明書みぶんしょうめいしょが必要になる為、替え玉も出来ないようになっている。推薦状を発行するに当たって、各発行する長たちの魔力半分と推薦者の魔力半分を羊皮紙に込める為確認作業の際に魔力検査機で絶対に違反が出来ないような仕組みを作った。因みに替え玉や強奪した場合は極刑が下った事例もある。なので近年そんな事をする輩も激減して現在ではやる阿保はいない。

それに国家魔導士試験は完全実力主義の為、自分の力でやったほうが残れる確率が上がるとも言われている。


――――――――――――――――

王都センティオ・王城前町おうじょうぜんまち

王城前町は円形で王都成形した際に内側から王城おうじょう前町ぜんまち門前町もんぜんまちと3層で形成された2層目の城下町じょうかまちである。


『王都の土産だったらココだよ!』『王都名物牛串焼おうとめいぶつぎゅうくしやききだよー』『武具買うんだったらウチ!良いもの揃えてるよー!!』『王都物語おうとものがたり王国千夜物語等おうとせんやものがたりなどの王都の物書きが描いた物はここ!うちだけだよー』


ジェイは思った…やかましい所だと…。

「全く…話しには聞いていたがこうも五月蠅いとは…」

その時、誰かとぶつかってしまったようだった。

女性らしき人は持っていた紙袋を落として、尻餅ついていた。

「あ、これは申し訳ない…お怪我はありませんか?」

「こちらこそすみません、よそ見して…」

ジェイは女性の立ち上がらせて落としてしまった荷物を拾い渡してあげた。

「本当に申し訳ない。お怪我がないようで良かったです」

女性は胸部はふくよかで身長もそれなりに有るがジェイがデカすぎて女性が小さく見える。女性は荷物を受け取り若干どもりながらも話した。

「い、いえ、こちらこそ本当にすみません。あの、もしかして、国家魔導士試験こっかまどうししけんを受けに来た方ですか?」

ジェイは何で分かったのか?と思ったがああ、そうだと言って答えると女性は話しを続けた。

「あー、やっぱり貴方もそうなんですね!私は国家巫女見習こっかみこみならいのソフィアと言います!合格したら王城で会う事も有るかもしれませんね!」

屈託のない笑顔が美しくもあり可憐でもあるなと思うジェイは自分の自己紹介をした。

「俺はジェイ・レプリカントという。今の所は無職の15歳だ」

「え!15歳!!私と同い年なんですか!?15歳で国家魔導士試験こっかまどうししけんって受けれるんですか?」

それもそのはず、国家魔導士試験は年齢制限が無いものの推薦者は大体20歳以上の者が多く、当日受験者の平均も25歳と年齢層高めの為に国家魔導士試験こっかまどうししけん受けるのは大体既婚者だいたいきこんしゃが7割ともいう程だ。

15歳で国家魔導士試験こっかまどうししけんの推薦を貰う事自体が事例がほぼ無い。

「ああ、そうか。15歳の国家魔導士試験突破というのは前例がないんだったな」

そう、例え受けれても10代での試験突破は前例が2例しか無い程に難しい試験なのである。

「俺は最年少で1発で合格するから大丈夫」

「ええええええええええ!どどどどどこにそんな自信が出てくるんですか???」

狼狽うろたえながら左腕をバタバタさせながら続けて話すソフィア。

「そもそも、推薦者でも合格率は一割もないんですよ!特に対人魔法戦たいじんまほうせんを必要とする今回のような一発試験では各地から選りすぐりの腕利き達が集まるので例え推薦状があってもほぼ一発は無理です!それに今回はいつもより参加者が多いそうなので何日掛けて終わるのかの方が心配です」

話しが終わる頃には大分落ち着きを取り戻し、ソフィアはスカートが埃で汚れてしまった部分をパッパッと、はたきながら落としていた。

ジェイは多分心配してくれているのだろうと思い軽く礼をして話した。

「そうか…心配して頂き感謝する」

そう言ってソフィアを見直すと少々頬が赤いような気がしたので風邪でも引いたのかと?尋ねるがソフィアはブンブンと顔を横に振り慌てて否定した。

「何でもないので!何でもないので…お気になさらずに!」

(あーもう!面と向かってカッコイイから何て言える訳ないでしょ!!)

「ふむ、そうかならいいんだが…では、そろそろ試験会場へ向かうとするよ。本当に申し訳ない。気を付けて帰りなさい」

「いえいえ、こちらこそすみませんでした」

お互い会釈し、それぞれの向かう方向へ歩み出した。


これがジェイとソフィアの運命の出会いだった。

そして《蒼い涙》という破滅はめつへのカウントダウンは今動き出す…。


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