第15話 安堵【7月23日】

♪ピコリン(メッセージが届く音)


 先日の一件以来、僕はただただ日々のルーティンをこなして過ごしていた。

 図書室で由依さんに会うことも、色葉さんと会うこともなく、静かな日々が流れていった。


 そんな土曜日の午後、1通のメッセージが届いた。


 たくさん届いたわけではないから、今日子さんからのメッセージではなさそうだ。

 スマホのディスプレイの表示を見ると、ホノ、と書いてあった。ホノ・・・色葉さんだ。


 僕は、そのメッセージを開けて既読にするかどうか悩んだ。なんの連絡もなしに約束を破ったから、さすがの色葉さんも怒っているだろう。

 そんな彼女に対して、何か言葉を返す気力が僕には残っていない。でも、ずっとこのままってわけにはいかないか・・・。


 僕は、意を決してメッセージアプリを開いた。


{奥山くん、ごめんね。もしかして、無理やり付き合わせちゃったかなって反省してます。でもね、チーが奥山くんと未来ちゃんに会いたいって言ってるの。私も・・・奥山くんが元気かどうか顔を見たい。もし、いやじゃなかったら、また家に来てね。待ってます。}


 僕は、そのメッセージを見て安堵するとともに、色葉さんの気持ちが少しわかった気がした。

 きっと、このメッセージは、僕の今の状況や、色葉さんたちの気持ちをたくさん考えた上で送ってくれたものだろう。だから、押し付けでもなく、引き気味でもない。色葉さんが僕たちのことを心配してくれていることがすごく伝わってきた。


 僕は、色葉さんのメッセージの既読をつけてから時間をおいて、返信内容をゆっくりと考えて、送信ボタンを押した。


{月曜日に行きます。ありがとう。}


 僕が送信したメッセージにすぐ既読がつく。そして、1分ほどしてから返信がきた。


{待ってるね。よかった。}


 色葉さんにしては短くて、簡潔な内容だったけど、彼女からもらった少しの元気で、僕はさっきよりも前を向くことができるようになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る