第7話 遠距離になる前に・・・

3月末、智花が4月1日から勤務する学校も発表され、2人が遠距離になる日もだんだんと近づいてきた。


付き合う前に、春からは遠距離になることは分かっていたはずなのに…。その日が近づいてくると寂しくなってきて…。2人は智花が地元に帰るまでの間、毎日のように会うようになっていた。



3月29日。

引っ越しの荷物をトラックの荷台に積み込み、智花は拓実と離れる前の最後の時間を過ごしていた。


「智花」

「なに?拓実」

「1月に2人で映画見に行ったとき、付き合ってくれてありがとね」

「ううん、私も拓実のことが好きだってことに気付いたから。こちらこそもっと早く返事してたらもっと長く2人で過ごせたのに…。クリスマスの時は迷ってごめんね」



そしていよいよ出発の時間を迎えた。智花の地元までは電車を乗り継いで約5時間の長旅だ。

「智花、最後にひとついい?」

「ん?」

「付き合ってからまだ2カ月だけど、この2カ月間、智花といろんな場所に出かけたり、2人の好きなことも共有できたり…毎日が楽しかった!明日からちょっと遠距離になっちゃうけど、もちろん毎日LINEしようね!たまには電話もしよう!そして難しいかもしれないけれど、会える時はまた2人で会おうね!」


なぜだろう。一生会えなくなるとかでもないのに。2人のは少しばかり潤んでいた。


「私も拓実と付き合うことができて良かったと思ってるよ。あっちに帰っても拓実のことを思い出しながら、立派な学校の先生になれるように頑張るね!」

「うん!応援してるよ!」

「ありがとう!」

そうして智花は、地元へと向かう電車に乗り込んだのだった。

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