第6話 卒業式

それからというもの、カップルとなった2人は智花が大学を卒業して地元に帰るまでの2カ月間にデートを重ねていた。手をつないで出かけたり、お互いの家を行き来したり…。


「卒業して遠距離になる前に智花の彼氏になりたい」


その夢を叶えた拓実の頭の中はこの2カ月間、毎日がバラ色だった。




そして幸せな2か月間はあっという間に過ぎ去り、大学卒業の日を迎えた。


「ただいまより第50回四戸流しどながれ大学卒業証書授与式を行います」

大学の副学長が開会の挨拶をして式が始まった。

300人弱の卒業生を代表して学年で一番の優等生と学内でも評判だった、菱川澄伽ひしかわすみかという女子学生に学長から卒業証書を授与された。

式は1時間ほどで終了し、すぐに帰宅する学生もいれば、遠距離になる友人との最後のひと時を楽しむ学生もいた。


「拓実!大学卒業おめでとう!」

最初に僕に声をかけてくれたのは、亮介だった。

「亮介も大学生活お疲れさまだよ!入学してすぐに友達になってくれてありがとね!」


亮介とは大学入学後に出会って友達になり、この4年間たくさん遊ぶ仲になった。実は亮介も卒業後は教師になることが決まっていた。


「こちらこそだよ!先生になったら忙しくなるかもだけど、これからも遊べる時は遊ぼうな!」

「うん!」


そこに彼女の智花がやってきた。

「なーに?男の友情ってやつー?」

「よっ!智花!」


亮介と智花は同じ学部で、お互い教師を目指していたというところから仲良くなっていた。そして一緒にハンカチを買いに行ったお礼として、智花が僕の彼女になったことも友達の中で唯一、亮介だけには伝えていた。


「ラブラブカップルの登場ですな!」

「ちょっ、やめてよ~こんなところで!」

「ごめんごめん(笑)」


最後に3人は「卒業証書授与式」の看板の前で写真を撮り、僕たちの4年間の大学生活は幕を閉じた。

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