第4話 かさぶたが剥がれる時

「14歳が1番大事な歳」そう思う過去がある。

彼に伝えるべきか…

痛みの共有は、後々大事になってくるか…

いや、それは大事な事だ。


「昔に何があったのか知りたい顔してるわね。」

「い、いや…」

「わかりやすい子。

また明日ここに来て。クラスメイトが戻って来る前に帰りなさい。体育の授業そろそろ終わると思うから。」

「そうですね…ありがとうございました。親にはこれからの事ちゃんと話します。」

「担任には私から言っておくわ。貴方は何も心配しなくていいから」

「は、はい…では、失礼します。」

まぁ、不信感は抱かれるわよね。

ここまでするカウンセラーなんて居ないだろうし。

とりあえず根回しをしなきゃ。


夕方、職員会議で私の取り組みについて議題が上がった。

「救済措置と言いますが、貴方はカウンセラーですよね。やり過ぎだと思います。」

「いじめの事実を確認せず、教室に行けないからすぐに相談室登校って、問題の解決になっていないですよね」

イライラする…。

「では、貴方達はいじめの問題を解決出来る自信があるのですね。」

「水澤先生は本当にいじめが我が校にあると思うのですか?」

「私は、いじめの問題を解決出来る自信があるのかと質問したのですが、答えられないです?」

空気が凍りついた。

「今相談室登校している生徒は2名、そして本日1人が明日からの相談室登校を希望しています。」

「それって逃げですよね。授業を教室で受けたくないからって…」

「どうしてこの3人が、教室で授業を受けたくないのか理由を知っていますか?担任なら、知っていますよね。平岡先生、阿久津英の抱えている悩み知っています?」

逃げなんて言わせない。

「彼は、コミユニケーションを取るのが苦手で、その為誤解されやすいです。周りの生徒もどう関わっていいのか困っています。阿久津自身が1人で居る事を望んでいます。そんな理由で相談室登校って、さすがに甘えだと思いますよ。逃げては協調性が身につかない!ここは学校なんですよ。嫌な事とどう向き合い、乗り越えるかこれが大事です。」

それが出来なくて苦しむ人が居るって事なんで分からないの?

「間違っていますね。平岡先生は阿久津英を全く見ていない。白川先生、今日の体育の授業何か感じませんでした?」

白川、お前はなんて言う?

「平岡先生が言っていたように、阿久津への関わりに周りが困惑しているように見えました。グループ分け、必ず阿久津1人残るんです。」

だめだこの教師たち。感覚が鈍っている。

「阿久津英は、英という名前がホストみたいだと言われ、それが理由でいじめられています。体育の授業でクラスメイトが言っていた言葉を聞きませんでした?あれを聞いてもいじめではないと?」

今まで沈黙を貫いていた校長が口を開いた。

「3名の生徒は水澤先生に任せましょう。いじめの問題はシビアです。そして、SNSが発達しているこの時代、本校のイメージが下がるマイナスな事は公にしたくない。特に、いじめと不登校。水澤先生の取り組みで、不登校生が0になっているとしたら、引き続きお願いしたい。」

クソな学校なら校長もクソだ。

会議は校長の一言で終わった。

「水澤先生!」

平岡だ。

「阿久津の事気づいていない訳ではないです。でも…」

「気づいていないフリをしていないと自分の立場が悪くなる。そうでしょ?」

「ごめんなさい…」

「いいです。私が生徒を守りますから」

「何故そこまでするんですか?」

またその質問。

「かさぶたが剥がれたので。」

「えっ?」

心のかさぶたが剥がれた時、私の仮面も剥がれる。

ここからが勝負だ。

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