第19話


「──今日から、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げた。今日から一稀に頼まれたバイトが始まる。


「よろしくね」

 にっこり笑う目の前の男性は、とても優しそうだ。このお店の店長さんらしいんだけど、そんな風には見えないくらい若くて爽やかだ。



 ここは若い子が好きそうなお洒落なカフェ。新しいのであろうその場所は、私の高校でも少し有名だ。人気な理由の一つとして、イケメン店長やイケメン店員がいるとの噂も。

 この店長さんを見れば納得した。紳士的で大人の男って感じ。もう一人、イケメンだと言われている店員はきっと一稀の言っていた先輩かな?


 そんなに大きなお店じゃないから、働いている人数も限られている。だけど最近このお店の人気が急上昇したせいで人手が足りなくなっているそう。



 一通り店長さんから説明を受けた後、先輩に紹介される。

「今日から一カ月、仲良くしてあげてね」

 ふとこちらに向けた視線はあまり歓迎ムードじゃない。


「……ああ、一稀の幼馴染だっけ?」

 柔らかそうな茶髪。校則は大丈夫なのかな?切れ長の目が前髪に見え隠れして、確かにカッコいい。


「はい、よろしくお願いします!」


 私には超ド級のイケメンが毎日そばにいるから、こんなとき免疫ができていて楽だ。他の女みたいにキャーキャー騒ぐ必要なんてないもの。

 遊とは違うタイプのイケメンだけど、好みの問題でこの人──英知先輩もきっとものすごくモテるんだろう。


「……ん」

 ……確かに、見た目は冷たそうでちょっと怖い。返事もいちいち素っ気なくて。一稀が慕ってるにしては性格が正反対だと思った。


「……ま、がんばれよ」

 でも…身構えた私に、そう声をかけた彼の表情は少し柔らかくて、この人のこと、嫌いじゃないなって思えた。


「はいっ!」

 ふふっと思わず笑ってしまって、解れた緊張。なんとなく、上手くやっていけそうな気がした。

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