第15話
「──ねえ」
でも男の子がそれを確認する前に、綺麗な手が画面を遮った。
「え!?」
隣では亜矢が発狂している声。
……顔を見なくても分かる。優しいその声色は私が何より大切にしているもの。
「……ゆ、……瀬川、くん……」
チラリと見上げたら、そこにいたのは紛れもなく私の彼氏。微笑むその表情とは裏腹に、どこか影をさしている瞳が私を戸惑わせた。
「そこ、通りたいんだけど……」
そう言われたから慌てて道を開ける。
「──宮西さん」
遊が発したいつもとは違う呼び方に、肩が揺れた。
「な、何……?」
上擦った声は、不自然じゃないだろうか。
「──ネクタイ」
私の胸元で揺れる制服のネクタイに触れた。そして少しズレていた位置を元の場所に戻す。
「……ずれてたよ」
胸元にあった手をするすると上らせて、私の頬を撫でた。その行為に辺りがざわつくのも当たり前で。
「ななななっ……」
真っ赤になった顔にあんぐり開けた口。私の顔は今非常に見苦しいものだと思う。
いつの間にかいなくなっていた爽やか系男子のことなんて今はどうでもいい。
「顔、真っ赤だよ?」
私の顔を覗きこんで、悪戯に笑う遊。……確信犯だ!!
「ちょっと……っ」
遊にしか聞こえないくらいの小声で反論しようとするけど、そっと髪に指を通す彼にまた周りが悲鳴を上げるから何も言えなくなる。
「ばか……っ」
絞り出すような声しか出なくて、遊の手を半ば振り払うようにしてその場を走り去った。
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