第7話



 ──ねえ、遊。私はいつまで片思いを続けたらいい?


 何度も考えては振り払い、また思案する。分かっていたことだ。彼が私を好きではないなんてことは。それでもいいと言ったのは、他でもない私なのだから。


 高校では、私たちが付き合っていることは内緒にしている。2年の月日が流れても、遊がモテるのは変わらない。彼が登校すればすぐさま女子に囲まれ、大名行列のように後ろから野次馬がついていく。そんな彼の恋人だなんて、どれだけ注目の的になるのか。考えただけでゾッとする。


 遊だって、私と付き合っているなんて周りに知られたくないんだと思う。それは私の推測であって、特に根拠はないんだけど。


 でも告白された時は「彼女がいるから」って断っているから、遊のファンも彼が彼女持ちなのは知っているはず。


 ……なのに、彼が告白される回数が一向に減らないのは何故なんだろう。


 噂によると、遊の彼女は「超絶美人でモデルみたいなスタイルの清楚系女子」らしい。それを聞いた瞬間、絶対に周りに知られたくないと改めて思ったのを覚えている。



「──今日もスゲーな、あいつ。」

 後ろから肩を組まれて、その勢いで前につんのめる。ギロリと後ろの顔を睨むと、歯を見せて笑う男。その顔は昔から見知ったものだ。


 幼馴染の一稀いつきは、私たちが付き合っていることを知っている数少ない友だちの1人。あり得ないくらいモテる遊の姿を見かける度に私をからかう。

「あいつがお前の彼氏なんて信じられない」

 その言葉に毎回、傷ついてしまうのは内緒だ。一稀は悪くない。


 遊が私のことを好きじゃないなんて、そんなことは知らないんだから。


 根は優しいこの人のことだ。きっと怪訝な顔をして、遊に詰め寄って、私のために怒ってくれるだろう。

 それでも、今の私にそんなことをしてもらう資格はない。

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