第4話
「──え?彼女って……え!?」
パニック状態に陥っていると、クスッと笑って
「……君を好きにさせてくれる?」
と首を傾げる彼。
ちょっと意味がわからないけど、返答次第では彼女にしてくれるかもしれないこのチャンスを逃すほど馬鹿じゃない。
「ど、努力します……」
意味もわからぬまま、とりあえず頷く。
微笑んだ彼にまたしても撃ちぬかれて、膝から崩れ落ちそうになるのを必死で堪えた。
「じゃあ、いいよ。付き合おうか」
ぽんぽんと頭を軽く叩かれて、触れられた所が熱くなる。ついでに顔も真っ赤だと思う。
そんな私を見てクスッと笑うと、彼は衝撃的な一言を発する。
「俺ね、恋をしたことがないから」
突然告げられた事実に顎が外れそうになった。
爽やかな表情とその言葉とはマッチしていない。
この挑戦、無謀すぎたかもしれない……と一抹の後悔が過ぎる。
「だから、よろしくね」
唖然とする私なんてお構いなし、目尻を下げてにっこり笑った。
「世良」
優しく私の名前を囁くから、もう全部どうでもよくなっちゃう。
(頑張りますよ、頑張ります!)
そう決意して、ぐっと拳を握った。
「そのネクタイの色、俺の友だちと一緒だから、同い年だよね」
私のネクタイにそっと触れる。あ、もうネクタイも洗えない……。
「俺のことも、遊って呼んで」
(──はい、撃沈)
その呼ぶのも尊い名前。さっき知ったはずなのに、もう私の頭にはインプットされている。
「ゆゆゆゆ……」
それでも唇が震えて上手く呼べない私の背中をさすってくれる。
「落ち着いて」
と諭されたから深呼吸をして、再チャレンジ。
「ゆ、遊……」
「……うん」
呼べた!と手を上げて喜ぶ私にまた可笑しそうに笑った。
「可愛いね、世良」
甘い甘いセリフを口にするこのお人形さん。私はこの人にどれだけ惚れ込んだらいいんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます