第3話
「──あの、すみませんでした。帰ります!!」
ひとしきり笑われた後、さすがに羞恥心も限界になって逃げ出そうとする。
するとパシッと腕を掴まれてそれを阻まれたから、もうこの腕は洗えないなとその時は真剣に思った。
「待って、ごめん」
……え?振られたの、今。
当然の結果だけど、やっぱりショックは大きい。涙目になった私を見て面倒くさそうな顔もせず、だからといって困った顔をするわけでもない。ただ目を細めて優しい顔をする彼。
「──俺の、どこを好きになったの?」
なんて言われて「これ以上辱めを受けてたまるか!」と思ったけど、あのバンビeyeで見つめられたら勝手に口が動いていた。この人の目は嘘発見機よりも怖い。
「え、あのその笑顔と──」
一旦言葉を切った私に、首を傾げて顔を覗き込んでくるお人形さん。
……これは言ってもいいのか。半ばヤケクソになった私。
「──くるんくるんのまつ毛、です」
大きな目元を指差して言うと、彼は実際にシパシパと音が聞こえてきそうなくらい立派なまつ毛を揺らしながら何度も瞬きをする。
そして
「──ふはっ」
堪えきれなかった笑いが、漏れた。
遂に恥ずかしさもピークに達して顔が熱を持つほどになったから、パタパタと手で扇いでいると、しばらく笑った彼が
「……君、名前は?」
と尋ねてくるから今度は私が目をまんまるにする番だった。
……彼ほど大きくないのは承知の上だが。
「せ、せらです!宮西世良」
自分の名前を噛まないように必死になったのは生まれて初めてだよ。
「せら、ね。俺は遊だよ、瀬川遊」
よろしくね、って差し出された手を握っても良いものか迷っている私に
「今日から彼女だよ?大丈夫?」
なんて爆弾を投下してくるもんだから
──私の精神は大丈夫じゃない。
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