第33話落ち込んでいます1

「どうでしたか?いつから教えて頂けるのですか?」

アイが嬉しそうに朝食時に聞き、途端にターニャはいたたまれない顔で下を向いた。

同じ事を今朝ターニャから聞かれ、昨夜の話をした。

「あのね、アイ。いいえ皆も聞いて欲しいの。サージュ様にお話をしたのだけれど、反対されたの。だから、その、昨日の話はなくなったの」

立ち上がり頭を下げた。

「そ、そんな頭を上げて下さい!」

アイだけではなく、皆の言葉が聞こえたが頭を上げる気にはならなかった。

申し訳なかった。

皆、と言うよりもサージュ様に。

私や、

召使いに、

少し気に入られたくらいで。

昨夜のサージュ様のその言葉が胸に突き刺さって消えない。

なんて馬鹿な事をしたんだろう。

前に相談しなさい、と言われたのに、お願い、なんて順番が違う。

相談して、話をしてから、お願いをするべきだった。せっかくサージュ様が私を気にしてくれていたのに、嫌われてしまった。

せめてエッシャーに相談すれば良かった。

少しでも、と思って頑張って来たつもりなのに、空回りして、私は・・・愚かだ。

あまりの自分勝手な行動に、溜息すら出ない。

「頭を上げて下さい。残念ですが仕方ありません」

私の肩に手を置き、アイの心配が伝わってきて頭をあげたが顔を見る事は出来ず、そのまま座った。

「でも、ちょっとくらい考えてくださってもいいのにね」

クリンの言葉に首を振った。

「いいえ、私がでしゃばってしまったのよ。サージュ様はサージュ様の考えがおありなの。それを無視してしまった形になるのよ。私が悪いのよ。ごめんなさいね、皆に嫌な思いをさせてしまったわ」

「でも、なんか残念です」

ターニャの言葉に皆がまた、暗い顔になった。

私はまた、立ち上がり、ゆっくりと皆の顔を見た。

「皆様宜しいですか?このセイレ家は本家です。その本家のご当主であるサージュ様の言葉は絶対です。今回は私に全ての責があり、サージュ様に責はありません。ここに来て私が屋敷の風紀を乱し、皆様の気持ちを乱しております。私が、私が・・・悪いのです」

言葉が終わる前から部屋の空気が変わった。

静かに皆が背筋を伸ばし、私の言葉が終わると、申し訳ありません、と1人、また1人と、頭を下げたした。

自分の言った言葉に、自分が1番嫌いだった。

皆が憧れ、私は違う、と言った言葉通り、

私は上級貴族だった。

私が培ってきた日々の全てを、サージュ様の為に、セイレ男爵家の為に尽くそう、と思い行動した事が、

サージュ様にとっては奢りと見えただろう。

より、距離を見せつける結果となったのだ。

私が、サージュ様の為にと想い、

敬い頭を下げるこの風景に、

重い気持ちになる。

サージュ様。

私がお願いしたあの時、嫌いな貴族がそこにいたのでしょう。

私は、本当に、

嫌われてしまった。

私は、本当にサージュ様の為に尽くしたい。

それなら、

「私なりに頑張るわ」

「分かってますよ。でも、ここ、部屋じゃなくて食堂ですよ。独り言も考えて喋ってくださいよ」

と、

ターニャの笑いながらの言葉に、さすがに恥ずかしくなって苦笑いの私に、皆が笑ってくれた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る