第18話謀られたお茶会3

「では、私から」

スティル様の言葉と一緒に、テーブに置いていた四角い箱を開けると、ホールケーキが出てきた。

初めの菓子を開けるのは、主催者と決まっている。

生クリームに包まれた真っ白なケーキに、さざ波のような模様があった。スティル様がナイフで切ると、断面は虹のようカラフルなジャムが見えとても美味しそうだった。

スティル様は綺麗で、でも味も重視し、これまでどれも美味しかった。そのケーキを控えていたメイドが、綺麗に切り分け1人ずつ前に置かれ、お茶も入れた。

「では、次はナターリヤ様のをお願いいたします」

「申し訳ありません、スティル様。せっかくのスティル様のお茶会てすのに、下賎な話をしてしまいましたね。では、私の手土産をお出し致します」

ナターリヤ様は得意げに立ち上がった。

「今回は少し変わったものを作らせましたわ」

今回も、でしょ。毎回有名なパティシエに頼んで作って貰ってるはずだ。

綺麗なら包み紙を破りながら、中の箱を開けた。

「綺麗ですわ!」オーラル様。

「本当に!」ルベラ様。

「本当に」

やっとアニスが口を開き、ちらりと私を心配そうに見た。

ごめんなさいね、心配させてるわね。でも、大丈夫よ。

「そうでしょう?ただ食するには大変ですのでお飾りと、思って頂けたらよろしいわ」

勿体ない。それでは菓子では無い。

持ってこられた菓子は、真っ青な四角い、多分チョコケーキだろうか?

その上に、宝石に見立てた大きな飴細工だった。

色々な宝石のを形どった、鮮やかな色。

見る限り、ダイヤモンドサ、サファイア、トパーズ、真珠、色々あったが確かにあまりに大きく、食するには向かない。

だから、飾りと言ったのだろうけど、だったら、何故持ってきたのだろう。

「でしたら机の中央に置きましょう。良い飾りとなり、華やかですね」

スティル様が優しく微笑み、手を差し出した。

「ありがたきお言葉でございます。この茶会の中央を戴けるなど光栄ですわ」

上手く言った、と関心する。

スティル様はあまり考えていなかったのたろう。珍しく、顔が引き攣るように動いたが、それは一瞬ですぐに変わらず微笑んだ。

それはそうだろう。

だって、この茶会はスティル様が主役なのだ。

それなのに、中央を戴ける、とまるで当然かのように言うなんて、スティル様が、自ら下になったと言ったのだ。

些細?

いいえこの小さき事が大きくなるのが子どもの茶会だ。

これが母にあがり、

父に上がる。

一挙一動が言った言わない、となる。

立場が弱い物は、言わなくとも、言った、となる。

そう、よ。

言ってないわ、スティル様は言っていはい。

何度も深呼吸し、

私は、

落ちぶれていても、

貧乏貴族であっても、

まだ、爵位はある、

アッシュ伯爵なのだ。

そして、セイレ男爵家を背負っているのだ。

「スティル様、ナターリヤ様、中央とは大袈裟ではないですか?何故ならナターリヤ様は前回のお茶会で中央はお茶会の主催者です、と仰いました」

私の言葉にナターリヤ様はひくり、と顔を歪めた。

それはご自分の茶会の時に、優越をひけらかす為に言った言葉だ。

それをそのまま使わせて頂きます。

「え、ええ、その通りですわ。私は、少し言い方を間違えておりました」

苦々しく、私を睨んできた。

いけないわ。

それを見て、何度も深呼吸する。

余計な事は口に出して、そのままではいけない。

ちゃんと蓋をしなければ、後々傷を残し、足元をすくわれる。

「いいえ、申し訳ありません。ナターリヤ様はわざとご自分を諌めるようにされたのでしょう?私達が気づくように、と。ナターリヤ様とスティル様のお言葉があったから思いましました。少しの事で思い出すきっかけを作って頂き有難うございます。そうして、ナターリヤ様はやはり、先を見据える賢しい方だと思い知らされ感服致します」

微笑む私に、ナターリヤ様が見たことも無い不自然な顔を見せた。

それは、私を見下すでは無く、まるで

見定める?

見極める?

不思議な顔でじっと見つめたが、直ぐに背け、お菓子を中央近くに置いた。

「こちらで眺めていだければ、と思いますわ」

ナターリヤ様が静かに座った。

ほっと安堵ししたのもつかの間だった。

かつん。

聞いた事のない音が耳にした。

「まあ!リーン様たら!!」

 耳元でオーラル様の大袈裟な声がした。

何?

と思い右下から音が聞こえたから下を見ると、 私が持ってきたお菓子が落ちていた。

「余計な事を言われていたから、気づかず肘が当たって、落ちてしまったのね」

ルベラ様の、からかうような言葉に納得いかなかった。

私は持ってきた菓子を、テーブルの端に置いていないし、肘も当たっていない。

誰もが菓子は己の前に置いていたのだ。

「何をなさってるの、リーン様!!そのようなみすぼらしいお菓子を違う拾うなんてお辞めない!!早く片付けてあげて」

私が拾おうとすると、ルベラ様が近くにいたメイドに指示し、そのメイドはすぐに拾いどこかに持って行ってしまった。

「お可哀想に、落ちたお菓子を拾うほど食べせても貰えてないのですね」

「違います」

ルベラ様の言葉に反論した。

今の方が良くしてもらっている。

それに落ちたけれど、中身は食べれる。

初めから見る気などなかったのだ。

「今回のお茶会は、レーン様があまりに心配さたから、リーン様を外に連れ出し気分転換させて上げたい、と、レーン様が提案しできたのですよ。それなのにまさか、このような事になるなんて、本当に酷いですね」

オーラル様の得意顔にまた不安が煽られる。

「提案?お姉様が?」

あのお姉様が自分の為にしか動かないのに、私の為になど考えられない。

「そうなんですの。レーン様はセイレ男爵のせいであのように病を患ってしまった。きっとリーンもそうなってしまう。その前に気分転換させて欲しいとお願いされたので、私達がスティル様にお願いして、わざわざ、セイレ男爵家に招待状を送って頂きましたのよ」

なんで、すって!?




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る