3話 七大罪スキル
「お前らやっちまぇ!あのガキを殺せ!」
はぁー…まだわからないか…殺気をガンガン出してるのに、感覚でもなんでも、俺の実力を察せないのは流石に冒険者崩れといったところか。まぁ、あいつらに勝ち目はないな。
「『重力操作—穴詰め—』!」
『穴詰め』は俺がまだ小さい頃に身につけた技だ。重力を操作して相手の目の前まで瞬間的に移動し、その後に千妖刀で斬りつける。まぁ初見でかわせる人はいないだろう。
「ギャッ」
おぉ盗賊どもが後退りしてる。やっと実力が分かったか。まずは一人。このまま全滅に持っていくか…流石にこの数に刀で戦っていたら時間がかかるな。
《炎魔法、フレイムスピア!》
今度は声を出す間もなく目の前の愚者共が炎の槍に突き抜かれた。それを一言で表すなら、『惨状』。いや、それでは足りなかった。
やってしまった…かんっぜんにやってしまった…何故俺はよりにもよってそこそこ強めな魔法を撃ってしまったんだろう
・・・まいっか!!結果アリアも守れたし、襲ってきたこいつらが悪いんだし!うん、俺は悪くない!悪くない…よね?
「さぁーて、盗賊も倒した事だし、こいつらの死体をストレージに回収して、アリアを起こしますかー・・・アリアー、起きろー」
「ふぇ…?ルイ…おはよう…ムニャムニャ」
なんだこいつ!俺がこんなにも命懸け(?)で戦ってたのにも関わらず、何もなかったかのように起きやがった!
「あれ…私たち…何してたんだっけ…?」
おっとしかもこいつたった10分程前のことを完全に忘れてるだと…?
「薬草採取に来て、いきなりお前が寝始めたんだろ?そんなに疲れたのか?ほら、早く帰るぞ。」
まぁ…眠らせたのは俺だし…?分かってなくても仕方ないと言えば仕方ないけど…
「あれ…?そうだっけ?なんか誰かにハンカチで口を覆われた気がするんだけど…そんな事ないか!ルイがなんもないもんね!」
「あはは…そう…だね…」
俺たちは燃えるような夕焼けを背景に、帰りの馬車に揺られていた。帰りではアリアが少し酔ったらしく、俺はずっと背中をさすって腕が疲れた。
あの戦闘の後、気になる事がひとつだけあった。それは戦闘直後の声。
〈熟練度が一定に足しました。スキル『炎魔法』がLv4になりました。熟練度が一定に足しました。スキル『予見』がLv4になりました。熟練度が一定に足しました。スキル『危機察知』がLv4になりました。条件を達成しました。称号『処刑人』を獲得しました。『処刑人』の効果により、スキル『暴食』を獲得しました。〉
この声だ。恐らくこれは『神託』の効果だろうが、気になるのはスキル『暴食』だ。
『傲慢』もそうだが、これらはキリスト教で大罪とされているものだ。そんなものがなぜ俺に…大賢者にも質問してみたが、あり得ない返答が帰ってきた。
〈アクセスが拒否されました。〉
あり得ない。大賢者がわからないものなんてあるのか…?いや、「アクセスの拒否」って事は、知っているが教えられない。または誰かに制限されている…?いや、考えていてもわからない。とりあえず、明日、『メノウ』の図書館で調べてみよう…
街に帰った俺たちは、すぐにメノウの窓口で薬草を渡した。さすがにその日中に持ってくるとは思っていなかったらしく、街で買った事を疑われた。
いや、違うよ!間違いなく採った物だよ!ちょっとスキル使ったけど、スキル使っちゃダメとは言われてないからね!
その後、テストとはいえ、一応薬草採取は常時受け付けのクエストらしく、それなりの報酬金が渡された。量が量だったので、かなりの額だった。
「とりあえずは明日、正規の登録を行いますので、また明日、こちらにお越しください。今日のところは、しっかりお体を休ませてくださいね。」
ギルドの周りには色々な宿屋があった。やっぱり、いいギルドの近くに出店したいよな。
「さて、どこに泊まる?多分、この額なら選び放題だが。」
「ここにしようよ!」
と言い、アリアが指差したのはギルドの隣の宿屋だった。こいつのことだ。めんどくさいから一番近くのところにしよう!ってかんじで決めたに違いない。
「ここならギルドに近くてすぐ行けるじゃん!」
ほらやっぱり。・・・まぁ『予見』で少し先の未来が見えてるんだけどね。ちょっと自分でテンションを下げつつも、外装はかなり綺麗な宿屋に入っていく。
「いらっしゃいませ。お客様のおくつろぎを第一に優先する、『幸せを運ぶ鳩の宿』へようこそ。ご宿泊ですか?」
「あぁ。2部屋空いてると助かる。」
「かしこまりました。それでは——」
「いや!1部屋で大丈夫!」
さっき貰った額なら余裕で2部屋は取れるのに…なぜわざわざ1部屋で済ませようとするんだ?まぁ…金は取っといて損はないけど。
「…かしこまりました。それでは、こちらお部屋の鍵になりますので、ごゆっくり、おくつろぎください。」
確かに、なかなかの宿だ。とりあえず一泊にしたがそれなりの料金だった。かなり高級な宿に入ってしまったようだ。
「アリア、なんでさっき1部屋でいいって言ったんだ?別に余裕で2部屋取れたぞ?」
「…ルイは…私と同じ部屋は…嫌…?」
「いや…そんな事ないけど。まぁいいや。お金浮いたし。おやすみ。」
「おやすみ…」
そんなアリアの顔は、少し赤らめていた。
翌日、まだギルドが開いていなかったので、先に図書館でくだんのスキルについて調べてみた。
だが…徒労に終わった。
なんで置いてないんだよ!この街最大の図書館だろ!
いやまぁ置いてはいたが、『禁書』の棚に置いてあるため、一部の者しか見れないらしい。司書さんにきいてみても、「ヒッ」と、なぜか怯えるばかりで何も分からなかった。七大罪スキル…そんなにタブーなものなのか…?
と、アリアを宿に置いてきてしまった。そろそろ起きただろう。ギルドも開いただろうし、さっさと冒険者登録を済ませたい。
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