2話 冒険者テスト
俺とアリアは馬車に揺られて、王都である『ファーモウト』へ向かっていた。
む…流石に長時間座ってると尻が痛いな…という顔をアリアがしていた。
俺は『物理耐性』があるからあまり痛くないんだわ。いやー、ほんと、俺に勝てるやついるのかね。この世界に(倒置法)。多分『不死』のスキル持ちじゃないと俺と張り合えないのでは?いや詳しくは知らんけど。
「ルイ!見えてきたよ!!」
俺たちの目の先には、巨大な城を中心とし、高い塀に囲まれた王都『ファーモウト』の姿があった。
いやー、もう少しで冒険者になれると思うと楽しみですねー。
「じゃぁな。お嬢ちゃんもにぃちゃんも、気ぃ付けてな。」
「「ありがとうございましたー!」」
馬車を降りて俺たちは、俺たちにとって非日常すぎる光景に目を輝かせた。
人通りの多い道、毎日出ているという出店など、全てが真新しいものだった。
まぁ流石にね、東京と比べると劣ってるけどね。この世界でこれならかなり栄えてる方じゃないか?
「で?どこのギルドに行くのかは決めてるのか?」
「うん!『メノウ』っていうギルドなんだけど、どう?」
『メノウ』か。なかなか評判のいいギルドをチョイスするじゃないか。こいつの事だからどこを選ぶか心配だったからな。あそこのギルドは実績もあるし信頼できる。
「お前にしては良いチョイスじゃないか。」
「『しては』って何よー!私だってしっかり考えてるんだから!」
道中、いろんなところに目移りして寄り道してしまったが、『メノウ』のギルドはなかなか立派な建物だった。
「中はさすがの賑わいだな。」
「そうね。なんたってここはこの国でも最大のギルドなんだから!」
中は本当に賑わっている。沢山の人が依頼の掲示板に集まっている。
本当にファンタジーの世界だな…自分達もこの仲間入りするとなるとやる気が湧いてくる。
「すいませーん。冒険者になりたいんですけどー」
おいちょっと待ったアリア。俺が観察している間にさっさと自分だけで行くんじゃない。
急いで俺も受付へ向かう。受付ではすでに、担当の職員が対応していた。
「冒険者希望の方ですね。では初めに、簡単なテストを行いますので、こちらの紙にご記入ください。テストといっても、薬草採取ですけどね。文字の読み書きができない場合は代筆いたします。」
冒険者の中には、文字の読み書きができない人も沢山いるらしい。あまり環境に恵まれなかった人達が、一攫千金を狙って冒険者になる事もザラだからだ。
これもし俺が字を書けなくても『大賢者』で多分書けるよな…ほんとにあの女神はチートスキルの数々を授けてくれたな。
・・・ほう。スキル以外の個人情報を記入するのか。確かに薬草採取にスキルはあまり絡んでこないな。…一部を除いて。
「「書けました。」」
「・・・はい、確認しました。では3日以内に、『回復薬』の原料になる薬草を採集して持参してください。」
確かに、薬草採取を冒険者のテストとして行うのは理にかなっている。薬草採取ぐらいでへこたれるなら、冒険者になんてならない方がいい。こうゆう合理性のある行動は、やはり職業病だろうか。見るたびに感心してしまう。
「よし、ルイ!薬草採取に行こう!」
「は?今から?」
嘘だろ?『3日』と言う期限があるのだからわざわざ今から行かなくてもいいだろうに。やはりアリアだけで行かせないで正解だった。
「当然でしょ!さっさと薬草集めて、早く冒険者になるわよ!」
「ちょっと待て」という頃にはもうアリアは外にいた。マジかよ。ほんとに今から行くのかよ….
『アルゴン大草原』では、様々な薬草が取れるらしい。お、『アルゴン』といえば、空気中に1割もない貴重なガスじゃないか。と頭の中で研究者ジョークを交えながら、俺たちは薬草を探していた。
「なかなか見つからないが、今日中に終われるのか?」
「別に今日中に終わらなくてもいいじゃない。期限は3日よ?」
おっとなんだお前。お前が今日中に終わらせると言ったんじゃないか。
でも、これじゃ本当に埒があかないので、少々ずるい気もするが、奥の手を使った。
《大賢者、回復薬の原料になる薬草の群生地は?》
〈直近で東に300mの森です。〉
いやー、ほんと大賢者便利。マジ便利。これあれば生きていける。(誇張)
「アリア、ちょっとこっちも探してみないか?」
「え?いいけど、そんな森の中に薬草なんて生えてるの?」
「いや、なんとなーくある気がして・・・」
「ルイ変なの。まぁいいや。いこっ!」
大賢者を使うのはなんて事ないけど、結果を誤魔化すのは少し大変。流石にスキルを見せるわけにもいかないし。
「あった!ルイあったよ!!」
そりゃそうだ。大賢者を使ったんだから、ない方が困る。という誰にも伝わらないツッコミを入れつつ、偶然を装って一緒に喜ぶ。こうしないと「お前分かってたん?」ってなってしまうから。それは普通にめんどくさい。
「おぉ!ナイス!流石俺の勘!」
「勘じゃなくて私を褒めてよー!」
その刹那、俺の『危機察知』が反応した。
「アリア伏せろ!!」
「え?」
仕方ない。『重力操作』で無理やりアリアを伏せさせる。
「キャッ!」
アリアの頭上を矢が掠めていった。なんでたかがテストで命を狙われるかなー
「ヒャヒャヒャヒャ!いい勘してんな坊主!」
「チッ。やっぱり賊か。」
恐らく八人程度だろうか。薬草採取に来た冒険者を狙っているのだろう。
「ルイ下がって!!」
アリアが俺の前に立ちはだかる。おぉ。良い反応じゃないか。そっか。アリアは俺が『凡人のステータス』だと思ってるのか。
「ルイは絶対に守る!」
嬉しい事を言ってくれるじゃないか。
・・・でも、流石に多勢に無勢か。徐々に押されてる。
「クッ…!」
アリアもそろそろ限界か。仕方ない。変わってやろう。と、その前にアリアを眠らせなければ。このスキルを見られる訳にはいかない。『調合』のスキルなら、眠り薬を作ることなんて造作もない。
「アリア。」
無理やり彼女をこっちに向かせ、薬を嗅がせる。そのままこっちに倒れ込んで寝てしまった。
「さて、選手交代だ。めんどくさいからとっとと終わらせてやる。」
「一人で勝てる訳ねぇだろガキィ!女に守られてた時点でお前の実力はわかってんだよ!」
やれやれ、人間の悪いところだ。視覚に頼りすぎて、それ以外の感覚が鈍っている。
「まぁ、なんでもいいよ。・・・『千妖刀召喚』。」
数あるぶっ壊れスキルの邪眼系統以外を全て発動する。ぱっぱらぱーと終わらせて、早く休みたい…
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