06 後悔
(原作4巻のネタバレありです。ご注意ください。)
再び俺が長門の話をかいつまんで説明すると、なんでも、数年ぶりに長門に情報統合思念体から指令が下り、敵対するTFEIと戦闘したところ、誤ってF君が巻き込まれてしまい、命に別状はないが、病院に運ばれたとのことだった。
「長門さんがそんなミスをするなんて、らしくありませんね」
俺から長門の話を聞いた古泉は、真剣な表情でつぶやいた。
「ああ。同感だ」
「……やはり、長門さんが感情を持ったことが、今回のミスにつながったと思いませんか?」
俺に聞かれてもな。それより今は、長門の状態が心配だ。
「僕も同感です。長門さんには、あなたが会ったほうがよさそうですね」
まあ、長門はお前とはあまり話してた記憶はないからな。高校時代の話だが。
「いる場所はわかってるから、長門と話してくる」
「ええ。長門さんには、あなたの責任ではない、とお伝えください」
俺には、古泉の言い方が少し引っかかったが、急いでいたので、気にしなかった。
○
長門は、F君の運ばれた病院の廊下で、ぽつんと影のように椅子に座っていた。
「長門」
「……キョン君?」
さんざん泣いたのだろう、目は真っ赤になって、白い顔の目元は赤くなっていた。
「……大丈夫か?」
なんで俺、もっと気の利いたことが言えないのだろう。
「うん……。とりあえず、F君は交通事故に遭ったことに情報を修正したから、敵対勢力のTFEIとの戦闘は誰にもバレてない、と思う……」
俺は長門の心配をして聞いたつもりだったんだが。
「……お前は大丈夫なのか?」
「……キョン君は優しいね」
そして長門は、ポツリポツリと話し始めた。
「ずっと、なんでこうなったんだろう、って、ここで考えていたんだ。今は、F君のご家族がF君のそばにいて……。あたし、何度も頭を下げたけど、ご家族からは自分を責めないで、って逆に励ましてもらっちゃって……。バカみたいだよね」
長門は、思い出したのか、涙を流し始めた。
「長門、つらいなら無理に話さなくても……」
「ううん。なんだか、キョン君と話してると、落ち着くの。それでね、あたし、思ったんだ。自分を無理矢理変えたから、エラーがたまって、こんなことになったんじゃないかって……」
また世界を変えようとするなら、俺は全力で止めるぞ。
長門は首を左右に振って、
「ううん。あんなマネは、もう二度としないよ。キョン君には、とても迷惑をかけたし……変えなきゃいけないのは、あたし」
「……どういう意味だ?」
「キョン君には、まだナイショ」
そう言って、長門はいつかの朝比奈さんのように、くちびるに指を当てて、シーッ、というポーズをした。
長門の目は、涙が浮かんでいたが、なにかの決意で満ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます