02 告白

 面接が終わったあと、長門と俺は安いパスタ屋に入った。無理して東京まで来たので、今月の俺の生活は相当きりつめないといけなかった。

 対して長門は、今日の面接があった企業が就活で最初に受けたものであり、いわば力試しだったという。

 長門と俺のスペックは、最初からアリと文字通り宇宙の果てまでの開きがあったが、この3年間でさらに広がったようだった。

「ここのカルボナーラ、おいしいよねー。チーズの味が最高!」

 ・・・・・・さっきの証明で長門が本物であることは理解したつもりだが、テンションの高い長門、というのは俺が気分転換に時々していたソシャゲ(課金はしてない)のSSR級に輝いてみえた。レアを超えている。

「どうしたの、キョンくん。パスタがのびるよ?」

「あー、そうだな。長門、今までどこかで頭でも打ったか?」

 もしくは情報統合思念体に性格のバージョンアップでも頼んだのか?

「ううん。ハルヒちゃんの観測はまだ続けてるけど、このごろは月イチくらいでレポートを提出しているだけで、情報統合思念体とはあまり通信してないの」

「じゃあなんでそんな……、いや、明るくなったんだ?」

 俺は超進化、と言おうとして、オブラートを10枚くらい急いで包んで質問した。さすがに失礼だと思ったから。

 俺の問いを聞くと長門は、静かにフォークを皿の上にカチャリ、と置いた。

「キョンくん」

 おお、無表情になると、顔はそのまま高校時代の長門である。

「驚かないで聞いてね」

 長門の続きの一言を聞いた俺は、残念ながらこの約束は守れなかった。


「――私、大切な人ができたの」


 ……つまり、彼氏か?

 俺は長門の告白に、黙って耳を傾けることしかできなかった。

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