第29話・アマテメス
「えー!? 私寝てたんだよ! そんなの、大変すぎるじゃん!」
エヴァは太陽に名を付けるといわれて、驚いた。なにせこの世に二つとないものである。
人類の語彙に責任という言葉は無い。サピエンスの語彙は増えてはいる。だが、まだまだ足りないのである。この世界は知れば知るほど、定義できるものなど無限にある。星の数以上だ、なにせ後世には夜空にある星には全て人から名前を贈られるのである。
「エヴァ頼む! あたしの家族なんだ!」
その責任重大すぎる仕事であるが、エヴァたちはもう二度こなしている。全ての生物に生命エネルギーをもたらす
「俺の姉貴だ!」
そして、水という概念を司る
「ごめん! こういう理由じゃ断れない!」
なにせ
「むー、しょうがない……。立派なの考えよ! まず、スサのお姉さんなんだよね!?」
エヴァは確認から行った。人となりを知って、それにふさわしい名前を付けようと思ったのだ。
「あ……あぁ。そう? そう、だな!」
先ほどは姉と言った
「どっちなの!?」
エヴァは困惑した。なにせ、両性具有など想像すらできないのである。
「あ、姉だ! 姉……だよな?」
「スサの姉だ!」
「じゃあ、女の人ね! そうだなぁ、エゼムにいた頃はなんて過酷な太陽って思ったけど、でも今は優しくも感じるね!」
砂漠の夜は寒い。その寒さを晴らしてくれるのはいつだって太陽である。だからエヴァは最近そんな風に思っていた。
「確かに! ちょっと厳しめの母親って感じだよな!」
とアダムも賛同する。
「とりあえずアマだね! 絶対入れよう!」
ママの語源にして、シュメール語の母の意味である。日本語にもこれは残った。女性を罵る言い方としてあるいは海女である。
「ぴったりだ!」
この
「ひったりかぁ?」
「ぴったりだ!」
「あのさ、テメンはどう? あの光がないと命が成り立たないわけじゃん?」
テメンは礎を意味する言葉だ。すべての命の礎として、アダムは考えたのだ。
「あ、それいいね! アマ-テメン……。んーもう一声欲しい!」
と、エヴァはなんとなくそれでは足りない気がしたのである。
「じゃあ、スメルはどうだ? ネアンデルタールの言葉では、祖という意味が有る。俺たちの中じゃ一番先に生まれたからさ」
最後に一語足したのは、
「じゃあ、アマテメス! 母なる祖なる礎!」
最後にエヴァが発音を濁して、アマテラスの名の語源になった。また、アルテミスの名もここから来ている。
太陽と月の神はどこでも“キョウダイ”だ、太陽を司るのが男である神話は、男性優位思想が現れる場所。女である場所は、女性優位思想、あるいはあまり気にしていない地域である。
「いいね! よし、早速伝えに行ってくる!」
「待て! カインとカナンがもう少し大きくなってからだ!」
だが、
「ごめんね……」
と、エヴァは微笑みながら謝った。
「仲いいんだな!」
アダムとエヴァの気持ちは一緒である。仲の良い家族とは、なんともいいものだと思えてならない。
「いや悪いね、ついつい……。まぁ、仲良しばかりさ!」
と、
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