第21話・コンタクト
やがて、
旅は雑談とともに続いた。ソリの家は改造され、御者席のような部分が増築された。エヴァはそこに座っている。
「二人共本当にありがとう! 美味しかった!」
家ソリを引く二柱は、この頃巨人の姿でいた。力を出すために、大きな姿なのである。
「まだあるよ! 欲しくなったら、いつでも言いな!」
「うん! ありがとう!」
エヴァにとって、これほどありがたい話もそうそうない。元気な子供を産める、そんな気がしたのである。
「あっ……」
急にエヴァが声を上げた。
「どした?」
アダムがエヴァに注ぐ愛情と、二柱の神が注ぐ愛情は種類が少し違った。
「あのね、お腹が動いたの!」
妊娠四ヶ月。この頃から、胎児は動き始める。エヴァはそれを感じたのである。
「おぉ! いつ、生まれるか……楽しみだ!」
アダムも早く我が子を抱きたくてたまらないのである。
一応、ソリはアダムも引いているが、全く戦力になっていない。ほぼ
「わんぱくかぁ? 俺はそうだと嬉しい!」
「一気に、何人も生まれるかも知れないよ!」
と、
イヌ科は5から10も一気に生まれる。人間でそんなことになったら大変だ。人間の脳は出産までに300MLを超える。五人も居れば、それだけで容量いっぱいだ。
「初めてだからなぁ……大丈夫かなぁ……」
そんな何人も、ちゃんと産めるのかエヴァは不安になった。
「大丈夫、群れで三人以上一気に生まれたことはないだろ!」
それで、アダムはエヴァを励ましたつもりだった。だが、三人でもエヴァはプレッシャーだった。
「あぁ、すまないね。あんたらは基本的に一度で一人か!」
「うん! ウカ、基本は一人だ!」
アダムは断言する。基本一人でたまに二人、さらにごくごく稀に三人である。この時の人類は、三つ子以上は伝説の存在だった。
現代では10つ子までが確認されている。人体はまさに神秘である。
「俺んところじゃ、すげえバラつくぞ! 一度に17も卵産む奴がいる! つっても、卵だからな……」
蛇は3から17である。あの細い体のどこに、それほど卵が詰まっているのか、
「17!?」
エヴァはその圧倒的な数を聞いて、母蛇に尊敬を感じたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
やがてオアシスに差し掛かる。暑くてたまらないこの砂漠で、最高の癒しの空間だ。
これまでは基本的に、
『ここは我らの水辺! 知らぬ者よ! 何故参った!?』
だが、そこにはネアンデルタールの新しい群れが出来ていた。言葉は、ネアンデルタール中東公用語とでも言おうか。中東のネアンデルタール人が一般的に使う言葉であった。
「なんて言ってるの!?」
エヴァは不安ながらも少し、身を乗り出す。
「まぁ、ちょっと交渉してくる!」
そう言って、
小さな群れだった。この群れには、食人の文化がまだない。食人の文化が生まれる群れには、傾向があるのだ。そして、その傾向をもつネアンデルタールの群れの方が圧倒的に多い。群れの最大規模150を超えるか超えないかの群れである。
『
そのネアンデルタールの群れは少しおかしかった。年長者が居ない。そして、子供もいなかった。
『否だな。水を飲んで、少し休んだら出ていこうと思った』
ネアンデルタールが彼らに話しかけていたのは、少し自分たちと姿が似ていたからだ。言葉が通じる可能性を考えたのだ。
『ならば、この水辺にいる限り食人は控えてもらおう! 我らはそれを嫌い、逃げ延びた民である!』
『心配いらない。俺たちも、それが怖いんだ』
だから
ネアンデルタールは考え込んだ。それが果たして本当か、否か。
『信ずる証拠はない。だが、見せぬ限り隣人として歓迎しよう!』
これが、ネアンデルタールである。まずは疑ってみる。立証を持って、それを信じる。故に、立証されない限り試すことすらないのである。
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