第20話・蛇語話者
帰ってきた
「なんだい? この状況……」
エヴァの周りに築かれた難攻不落の蛇の砦。それは、周囲の暇な蛇たちの社交の場にすらなっていた。
「
「
そう、
「
「
と、会話しながら、その蛇と
それをエヴァの方から見ると、すごい光景だった。
「蛇の海が割れてる!!」
ところがどっこい、アダムは気が気でなかった。多く集まると、中には変な人間も現れる。それは、エゼムの地で痛いほど身に染みていた。これだけ蛇がいると、中にはそんな蛇もいるのではと思ってしまっていた。
なんとか刺激しないようにと考えると、もう発言ができない状態である。
その割れた蛇の群れの中を
「待たせたね! これなら、食えるかと思って持ってきたよ!」
と、ゴロゴロと果物を取り出したのである。
主に柑橘系だ。妊婦というのは感染症などは致命的である。酸味をもつ食べ物は感染の予防になるものが多い。よって、すっぱいものが欲しくなるのだ。
「うわー! オレンジだ!」
だから、エヴァは喜んだのである。味を想像すれば、今欲しい物ばかり。やはり、
「んで、アダムはやたらビビってるけど?」
「あー、あんまりたくさんだと怖いんだって。みんなスサの声聞いてきた子だから、大丈夫だと思うんだけどなぁ」
エヴァは全く警戒していなかった。
オレンジを剥きながらの回答である。
「そうだねぇ、悪い子はいないだろうさ!」
「ウカ……本当に、大丈夫か?」
「お前生きてるじゃないか。スースサー!」
と、人間の口で無理やり蛇の言葉を真似て、一匹の蛇を呼び出した。
出せるかと思い試してみると、できちゃったのである。
「
さっきまで蛇だったことを、蛇たちは覚えていない。記憶力は少し低いのだ。ただ、繰り返し見たことはなんとか記憶できる。蛇は、そんな程度の記憶力である。
「コイツに噛まれると、血が止まらなくなる。しかも、噛まれた周囲から腐るおまけ付きだ。まず死ぬだろ?」
その蛇はパフアダーという蛇の原種である。噛まれると腐ることから、クサリヘビと呼ばれる種類だ。
「ひぃ!?」
アダムは聞くからに恐ろしいその毒に恐れおののいた。
「
その大声が怖くて威嚇態勢に入ってしまう蛇。
「
と、説明する
「んー! さっぱり!」
と、オレンジを食べるエヴァ。
状況は混沌を極めていた。
「
ただ、蛇は臆病だが案外理知的だ。自分より大きな相手に襲いかかるのは、やらなければやられると思った時だけである。
「この子も噛んでないんだから、怖がらないでおやりよ」
と、アダムを
「そっか、確かにそのつもりならいつでも殺せたのか……。ごめん」
それを、蛇に対して通訳したあと、
「しかし人間の口って本当に便利だ! カタコトにはなるけど、蛇の言葉まで話せる」
人間の口は訓練で、本当にいろいろな音を出せるようになる。その万能さに驚いた
「じゃあ、もしかして俺も!?」
アダムは、言葉が通じれば今回のようなすれ違いもないだろうと思った。
「できるかもねぇ」
と、
「え!? 私も!」
もちろん、エヴァが蛇語に興味を示さないわけがなかった。
そして、
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