9 鬼女

そろりとひたると

あぶらののった鬼女の

うでからかたへと

あがりだしたおゆが

よふけのしじまへと

ゆぶねのふちから

あふれだします




……ああ 

  いいおふろだこと





鬼女はけぶるゆげに

まなこをつむり

それから

まだ女でいることの

禍福にゆらいでる

むなぢちを

だきかかえます


すると

たえて人肌にぬくもらず

いるこのからだが

あわれにもだらしなく

ふがいなくも

おもえてきて

ふかくいきを

はいてしまうのです 


けれどそれはそれで

なにやらすがしくも

おもえだしてきそう

なのでかえって

──泣き崩れてしまう

  しかない 鬼女





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