第十五話
「おぬしは何度言えばわかるのじゃ!」
「えへへ、だってやれる気がしたんだよ!」
「そう言って以前、我の城の一画を崩壊させたのを忘れたのか! あの時は本当に大変だったのじゃ! ええい、とにかくおぬしは下がっているのじゃ、必要な時は呼ぶ」
「はーい、じゃあリゼットさんを手伝ってくるね! あとは任せたよ、お師匠さま!」
「手伝うも何も、ここはおぬしの店じゃろうに……」
俺はそんな会話を聞きながら、ゆっくりと意識を覚醒させていく。
それにしてもここはどこだろうか――確か昨日、俺はミーニャの作ったよくわからない何かを食べたら、急激に意識が薄れていって倒れたはず。
あの後どうしたのだろう。
まるで記憶がない。
「む、起きたのか?」
声をかけられたと認識したことによって、明確に覚醒した意識を持って俺は目を開ける。
「ここは……?」
「ミーニャの家の寝室じゃ、特に体の異常などはないな?」
「いや、体の異常とかは特にないんだけどさ」
俺は上半身だけゆっくり起き上りながら、俺が寝ている布団の隣に正座している金髪碧眼のロリ狐――今日は黒と赤で彩られた巫女服のようなものを着ているマオを見ながら言う。
「どうしてお前がここに居るの?」
「む、いきなり『お前』とは……あいもかわらず失礼なやつじゃのう。まぁいいのじゃ、その質問の答えは簡単なのじゃ」
マオはモフモフ狐尻尾をフリフリしながら、話し出す。
話し出すのだが、巫女服ロリ狐が眼の前で尻尾をふりふりしていて、まるで話に集中出来る気がしない。
だがせっかく話してくれるというのだから、頑張れるだけ頑張ってみよう。と、俺はふりふり動くモフモフを見る。
「我がここに居る理由、それは我がミーニャの師匠だからなのじゃ」
「師匠?」
「む、そういえばおぬしはミーニャが異世界から召喚したのじゃったな……うむ、おぬしにもわかりやすいように言うのなら、我はミーニャに魔法を教えた先生なのじゃ、とっても偉いのじゃ!」
えっへん。
そう言うかのように、いつみても小さい胸を張るマオ。
とても可愛らしい――あと、耳がピクピク動くのも凄く可愛い。
ん?
っていうか今、何気に凄い事を言っていなかったか。
「お前がミーニャの師匠? じゃあお前がミーニャに魔法を教えたのか……ってことは、お前も魔法使いなんだよな?」
「一度に質問をたくさんするでない。それに我は魔法使いなどというしょうもないものではないのじゃ!」
「でも魔法使いのミーニャの師匠なら、お前も魔法使いなんじゃないのか?」
当然のロジックだろう。
剣士の師匠が剣士であるように、空手家の師匠が空手家のように、弟子と師匠は同じ職業というのが当たり前なのではないだろうか。
俺が怪訝な顔をしているのを見て取ったのか、マオは自慢気な顔をして言う。
「我は全ての魔法使いの頂点に立つ存在にして、この世界の真の支配者」
魔王じゃ。
何でもないかのように、彼女はそう言った。
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