第14話 毒入りの親
従姉妹のことを反芻している。
従姉妹がお見合いで結婚すると聞いた時、
私は自分の人生を生きるのに必死だったから
たいして何も感じなかった。
ただ、親戚から叔母の話では、相手は京都の代々続くお金持ちだと言うことだった。
だから、久方ぶりに会って家に尋ねた時も
こんな所にすごい家だなぁと思って、やはりお金持ちなんだと思った。
それなのに、新聞の広告をメモ用紙にしたり
カップ麺のプラカップを沢山重ねていたり。
包装紙をのりで貼り付けて袋を作っているのを見て正直、京都人になったらこんなんかなぁと思った。
先日のランチの時に従姉妹が実は夫のお父さんがとにかくお金使いが派手だったそうだ。
おまえに、従姉妹の夫の給料もこのお父さんが管理していて、従姉妹は必要な食材費やら日常品を買うだけのお金を貰っていたと言うのだ。
夫のお父さんは財産の殆どを使い果たして
代々の大きな家を売り、そのお金と自分の退職金を全部つぎこんで、勝手に二世帯を建てたそうだ。
そのあと、介護が必要になったのだか、
従姉妹の夫は施設に入れたら死んでしまうと
頑固に拒否をしたため、介護サービスはいっさい使わずに食事から下の世話、入浴などを
従姉妹がやっていたと言う。
夫のお父さんが亡くなり、お母さんが認知症になったのだが、それも自宅介護。
その頃は子育てだってしてたはず。
私は思わず言った。
「なんで、そんなにしてまで我慢したん?
別れたら良かったんちゃうん?」
従姉妹は少し怒ったように言い返した。
「子供の頃な、お父さんの会社が潰れかけて
夜逃げしたやろ。
あの頃な、借金取りも来るしで、あちこち転々としたんよ。
だからな、屋根があって暮らせる事だけで
幸せやったんよ。
それにあの家出ても帰る家なんかないしな。
おしたしちゃん、わかるやろ?」
確かにそうだ。
屋根があってご飯が食べられる、そんな当たり前の事がうちらには憧れやったもんな。
悪い事を言ったと思った。
「しんどい事はお互いあったけど、子供達には
ちゃんとしてきたし。
今は幸せな方やね。それで良しやね。」
そう答えるのがやっとだった。
「あんな、お母さん(実母)の事もな、
しんどいねん。そう言う時にな、お金なくても
お母さんがある物で誕生日ケーキ作ってくれた事やな、食べるもんが少ししかなくてもな
ラジオをみんなで聴きながら笑ってご飯食べた事を思い出すようにしてんねんよ。」
従姉妹が言う。
私は思う。
それ、おかしいんだよ。
普通の親に育てられたらわざわざ、むりくりに
親との良い思い出を探す必要なんて無いんよ。
いっぱい持ってるから。
そう言えば、私は父の良い思い出は、、。
なんだったのだろうか。
さっぱり思い出せない。
毒親って言葉が作られたけど、どんな親をさすのだろうか。
私達の親のことなのだろうか。
毒親は死ぬまで呪縛から解き放してくれないようだ。
私は父が早く死んで欲しいと願っていた。
死んでからは、かなり精神的に重い付きものが取れた感じがする。
この従姉妹が解き放されるのは、まだまだなようだ。
それまでは、せめて話くらいしか聞けないけれど、それが私の役目なのかも知れない。
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