第3話


大人たちは役に立たない。

三歳ながらもその現実を痛感した俺は発想を変えた。



―—隣を争うならみんな一緒の布団で寝ればいいじゃん、と。



今までなら眠たくなった幼女たちが自然とシャットアウト、その後先生たちによる後処理によってここまでの紛争に拡大しなかった。だが最近幼女どもは成長したのか、ある程度の眠気に耐えられるようになったらしくその分俺にしわ寄せが来た。

俺が男だという事である程度接する際の良し悪しの境界を作っていたと思うのだが(…作ってたよね??)、俺は普通の男達とは価値観が違うし、そもそもの話家でと散々スキンシップをしているのでこの程度造作ぞうさもない。





「…いっしょのふとんでねる?」



『『『!! ……う、うん』』』





そう思って声を掛けたんだが…奴ら急にしおらしくなった。

先ほどまでの突撃魚みたいな元気はどこに行ったんだろう。


いや、どこかソワソワしながらもチラチラと視線を感じる。

…もしかして照れてるのか?




あっ…ふーん。




欲しかったものが手に入るとわかると急に恥ずかしくなったのかな?

感情と理性でせめぎ合ってるのかな?かな?



ふっ、かわいいところあるじゃん。これはいじるしかないよなぁ?




「かおまっかだけど どうかしたの…? 」



『な、なんでもない!』


『ちょっとあついだけ!』


『そうだよ!』



「ふーん」



『……』


『……』


『……』



「じゃあおれ、ねむいからさきにねるね」


『えっ』


『『『あ!』』』




何か聞こえたけど無視。

俺は聞き耳を立てながら布団へ横になった。

さあ、幼女ショーといこうか。



『どうしよう』


『あっくんねちゃった』


『さ、さきにいいよ』


『そっちこそ』



俺の周辺でそわそわ、ひそひそと話す幼女たち。

…うんうん、よきかなよきかな。


字ずらだけ見ると俺の圧倒的犯罪者感が凄いが、この世界ではむしろ正反対で俺が幼女たちに襲われるように見えるのだから不思議だ。

特に意味は無いけど早く小学校高学年になりたい。特に意味は無いけど。



『わたし……いってくる…!!』


『『『が、がんばって!』』』



そうこうしている内に、幼女たちに見守られながら一匹の幼女がやってきた。名前はルナ。数多いる幼女たちの中でもリーダーシップのある幼女だ。



『あ、あっくん……おじゃまするね…?』



俺はすでに寝ている設定なので返事はしないが、ルナは声をかけてからオドオドと布団の中に侵入してきた。



『あっ あったかい…』


『あっくんのにおい……えへへ』



横から匂いを嗅ぐ音がした後そんな声が聞こえてきた。顔を確認せずとも伝わる蕩けてそうな声だった。…本当にこの子三歳なのだろうか?俺は怪しんだ。


そしてしばらく二人っきりで布団で過ごした。

スンスン…ルナちゃんいい匂い。



『わたしも!』


『あっくんのにおい!』



が、そんなことを他の幼女たちが許すはずもなく、二人の静かな幸せはあっという間に崩壊した。



…ぐふぇ。





一方その頃。

現在、幼女と布団でサンドイッチ状態の彼と一番仲良しなはずのマヤちゃんはというと。



『う~! 』



唸っていた。あっくんと自分のライバル達がイチャイチャしているその光景を見て『ずるいずるいずるい!マヤも!』と嫉妬していた。


実はこの保育所ではお昼寝の際にあっくんローテーションなるものが存在し、決まった曜日でしか彼と一緒に寝ることは出来ないのである。


まさしく勝者と敗者。


それを目の前に羨やむ数多の幼女たちは、皆お預け状態であった。











『よし!今日は私のあっくん! んじゃ、敗者どもは自分の仕事に戻ってね~ 』


『チッ』


『後で覚えておけよ』




――いや、歳は関係なかった。





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