第2話


あの後『全員でお嫁さんになればどうかな?』と何とか先生が場を沈めてくれた。


―—全くあっくんってば……



”しょうがないんだから”とでも続きそうな言葉を残して。



え、先生もしかしてこの状況を楽しんでる? 顔がにやけてる気がするんだけど。それに冷静に思い返せば毎回この修羅場みたいなのが起こるのおかしいよね? 普通なら先生が未然に防ぐか何か対策すると思うんだけど。




『……うふっ』



あのやろう笑いやがった。取り繕うのを辞めたニタニタした顔でこっち見てるわ。

はい確信犯。あとで公衆の面前でショタ攻撃してやる。3歳児に興奮する成人女性としてみんなに晒してやる。


そんな決意を胸に俺は幼女たちと夫婦ごっこ(妻4人)を乗り切った。



『あっくんはわたしの~!』


『わたしのだよ~!』


『あっくんはわたしのことがすきなんだから~!』


『マヤはにんしんしてるもん~!』


『『『あっくん?!』』』




……乗り切った。




☆☆☆



幼女たちを戯れた後にやってくるのはお昼寝の時間。

布団が敷き詰められ日差しを遮るようにカーテンを閉められた部屋で先生たちによって寝かしつけられる時間だ。


普通ならここで、男女比の関係上男はどうしても大事にせざるを得ないため男だけは別の場所で…となりそうなものだが特にそんなことは無く同じ部屋で寝かせられる。


おそらくそれは、未熟児なんだから少しくらい大目に見てよーという建前、本音はなんらかの大人の事情が関わっていると思っている。特に最近では男性出生率が減少傾向にあるため女性が主体の社会構造をしているこの国では、なるべく男性との関わりを保たせたいのかもしれない。

一方で、男性保護を謳う人々が出現し『同じ空間(学校)で過ごすだなんて…襲われたら責任とれるんですか?!』『男性の支持を得れず国外に逃亡した場合はそれこそ本末転倒では?!』『政治家は男を独占している!』『羨ま…けしからん!』と世論を味方につけようと躍起になっていることも。


対して政治家はと言うと、”男性との関わりの増加”を選挙公約を掲げて活動している。公共料金の補助とか保育の無償化とかを掲げる人もいるけど、親が望むのは娘(と自分)の良い未来(男)だから結局どうしても男性関係の公約の方が当選しやすい。世知辛いなぁ。


―――いつの時代も保護団体が出現しては世論を味方につけ政治家とバチバチにやり合うものなのだ。



まあそんなことはさておいて…今、目の前ではデジャブもとい再び問題が発生している。

それは、お察しの通り




『『『『『あっくんのとなりがいい!』』』』』



つまりそういうことだ。


これもおままごとと同じ類のもので、今のところ毎日飽きなく行われている。

始めは「俺のために争わないで!」と内心ニヤニヤしながらも優越感に浸っていた俺だが、こう何度も行われると「あーはいはいいつものね」と達観している。…いや、無くなったらそれはそれで悲しいんだけどさ。



『きのうとなりだったでしょ!』


『ずるい!』


『やだやだやだやだ!』


『はいここわたし!』


『あっ! 』


『わたしも!』



俺がポジショニングしている布団の隣に幼女ミサイルが次々に飛んでくる。


ケガをしないからいいもののどう考えても監督者に問題があると俺は思うんだ。だからさ?いつになったら注意をするんだよ先生方。

そう思い、ある程度察しながらも向こうへ視線を向けると




『昨日あっくんの添い寝(絵本読み)してたよね?今日は私だよね?!』


『そっちだって昨日あっくんの事抱っこしてたじゃない!』


『ていうか貴方はほかの組の担当でしょ?!なんでドサクサに紛れているのよ!』


『あなたたちばっかりあっくん独占してずるいわよ!所長に抗議する!』



幼女と同レベルの争いが繰り広げられていた。





はぁ…。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る