第7話7日目

スーラがとりついたコンビニ店員は二十歳の女子大学生で名前を水野麻友といった。彼女の持っていた学生証と免許証で知ることができた。

水野麻友が着ていた服は穴だらけで血だらけだったのでゴミ袋に入れて捨てることにした。

今は僕のジャージの上下を着ている。スーラがとりついているので羞恥心というものはないようだ。

目の前で素っ裸になり、着替えるのであった。僕はそのきれいな裸体をしっかりと堪能させてもらった。


朝になりスーラがお腹が空いたというのでご飯を食べることにした。スーラは六枚切りのトーストを五枚ペロリと食べる。僕は残りの一枚にマーガリンを塗り、それを食べる。

「人間になってよかったわ。食べ物の味がしっかりわかるもの」

パクパクとトーストを頬張り、ごくりごくりと喉をならして牛乳を飲む。

「ねえ、また本を読んでよ。スーラあなたの声好きなんだ」

スーラは言う。

膝枕をおねだりされてのでその小さな黒髪の頭を僕の膝に乗せ、ロピンソン・クルーソーを読む。

ロピンソン・クルーソーにはフライデーというかけがえのない友人がいた。きっとスーラも僕にとってのフライデーとなるだろう。ちょうど今日は金曜日だしね。


このアパートにいられるのも今日で最後だ。明日には出ていかないといけない。

しばらくは二十四時間営業のネットカフェで寝泊まりするとして、それから先はなにも決まっていない。

不安しかない。

僕はスーラの黒髪を撫でる。

スーラはにこにことうれしそうだ。

スーラが人間にとりついてくれて良かった。こうやってコミュニケーションをとれるのは正直言って楽しいものだ。


お昼は冷凍うどんを食べた。粉末の出汁をお湯でとき、そこにレンジでチンした冷凍うどんをいれる。そこに玉子を割り入れてひと煮たちさせる。

これで冷蔵庫のものはなにもかもなくなった。

スーラはうどんを三玉も食べた。

スーラが美味しそうに食べるのを眺めているとスマートフォンがやかましく鳴る。

四日前に面接を受けた食品加工会社からだった。面接は合格で明日から来てほしいというのである。住むところは会社が借りているマンションがあるのでそこに住んでもいいとのことであった。

就職はあっけなく、すんなりと決まってしまった。

「良かったわ。あなたが働いてくれないとスーラ食べ物が食べれないもの」

そう言いスーラは僕にぎゅっと抱きつく。女の子の体は柔らかくて温かくて、とても良いにおいがした。

「スーラがずっと一緒にいてくれるならもうなにもいらないな」

僕は心のそこからそう思った。

友だちも恋人もいらない。

スーラがいればそれでいい。

「当たり前よ、スーラはずっとずっとあなたと一緒にいるわ。だってスーラは寄生生命体なんだからね」

スーラは言い、さらに強く僕をだきしめるのだった。その腕の強さはもう離さないよといっているかのようだった。



終わり

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ある日スライムを拾った。 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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