第5話 倉庫と名前

朝起きる。


 今日も休みで、スバルの家の倉庫で会って演奏を合わせる予定だ。


 演奏を合わせて、それから今後の方針を決める。


 朝シャワーを浴びて、寝ぼけている頭を目覚めさせる。


 朝ごはんにバナナ二本を食べて、お昼までのエネルギーとする。


 持ち物を用意して、自転車で彼の家に向かう。


 約束の時間に間に合わなそうだったので、爆速でペダルを漕ぐ。


 ギリギリ時間に間に合い、息を切らしながらスバルの家の倉庫に入った。


「こんちゃー。来ましたー」


 彼はギターを引く手を止めて、


「早速だけど、合わせよっか」


と言い、向かい合い、あぐらをかいて、演奏を始めた。


 お互い気になったところを言い合い、演奏をつづけた。


 数回続けたあと私は、


「結構良い演奏になったと思うけど、これからどうする?」


 私は聞いた。


「じゃぁ、動画を上げるのはどう?」


 彼は言ってきて、私は、しばらく無言で考えたあと、


「顔バレとかしなかったら良いよ」


と返した。


 スバルは、


「じゃぁ、動画を投稿する方向で進めましょうか」


と、言ってきた。


 動画を投稿するために必要なものを考える。


 カメラはスマホでOK。あとは、アカウントとか・・・。と、考えているうち、スバルは、


「アカウント名はどうする?」


と先読みされた。


 この一言をきっかけに、バンド(?)名決定討論会が始まった。


 私はギリシャ神話から取るのがオシャレだとか、日本の神話が良いとか言った。


 スバルは、有名な文章や、小説の名前を文字るのが良いとか、なにかインテリ風なものが良いとか、言った。


 具体的なものから、抽象的なものまで。


 ノートに書いては、斜線を引いて、ノートに書いては斜線を引いてを繰り返した。


 最終的に残ったものは、吾輩の猫、ディスコグラフィー、濫吹、カラスの殺人だった。


 私も案を出したが、全てあまり面白くなかった。


 ここから、一つ選ぶ。


 吾輩の猫は、もちろん、吾輩は猫である。


 ディスコグラフィーは、音楽のジャンルごとの歴史などを考える学問のこと。


 濫吹は、能力がないのにまるであるように見せる人のこと。


 カラスの殺人は、a murder of crows という、カラスの群れという意味の英語を日本語に訳したものだ。


 この中で検討した結果、カラスの殺人がなんとなくカッコいいと思って、それに決定した。


 そして、カラスの殺人という名前のアカウントを取得した。

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