第2話

「武さん。武さんには、ずいぶんとお世話になりました。わたし、しあわせになっていいのでしょうか?彩子さんには申し訳ないことをしました。でも、あの夜のことがなければ、わたし、ずっと、思いを抱え込んだままでした。武さん、本当にお世話になりました」


武は、酔っていたにもかかわらず、胸が苦しくなった。

最後、みな、解散した後、武だけ、実樹を駅まで送った。

「もう、変なことにはなりませんからね。武さん!」

「わかってるよ、実樹ちゃん」

「わたし、あの夜どうかしてたんです。本当は、武さんのこと、ずっと、あこがれだったんですが、武さんは、彩子さんのもので悔しかったんです」

「実樹ちゃん......、なにもできずにごめん」

武は、ある種、実樹の強さを尊敬していた。だからこそ、何もできないでいる自分がどうしたいのか、わからない。

駅についた。

「武さん、わたし、武さんに渡したいものがあるんです」

「ん?なに?」

「これどうぞ。わたし、武さんに負けないくらい、しあわはせになってみせますね!」

笑っているように見えたが、実樹の目には、涙があふれていた。

「じゃ、わたし、これで」

そう言って、実樹は袋を渡し、改札口にはいっていった。


後で開けてみると、黄色いハンカチーフだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る