第5話 勝利の味
さすがに、びっくりヤンキーで1人2500円も食べられるのかという疑問があったが、4人全員がぺろりと平らげてしまった。
「ふぅ〜、美味かったぜ、あとはパフェ食べて帰るだけだな」
「僕も早くパフェが食べたいな」
「す、少し待ってくれ、後二口で終わる」
「龍蔵はいっつも食べるの遅いんだよな」
「よく噛んでよく食べる、これが朝倉家の家訓だからな、春馬達は逆に噛まなさすぎじゃないのか?」
「そんなことないと思うけど……」
そう話してるうちに龍蔵も食べ終わり、4人のパフェが届いた。
「俺さ、本当は今日怖かったんだ。また死ぬかもしれないって思って悪夢も見たし、寝るのが怖かった」
唐突に和哉がポツリと話し出した。
それは多分、俺達全員が思っていたことで、スライムの弱さに落胆もしたが安心をした俺達もどこかにいたはずだった。
「和哉…………」
「そんなのお前だけでは無い、俺だっていくらデータを集めても安心はできなかった」
「けどさ、僕達は1人じゃなかった、今こうして笑っていられる。今日以上に怖い日はなかったと思うんだ!」
「和哉、お前が持ってた不安は俺達も持ってる、でもこの4人でここまで頑張ってきたって気持ちと努力は絶対に裏切らない。だからこんなしんみりした空気じゃなくてさ、明日からもバカやって笑えるような雰囲気で今日を締めよう」
「お前ら…………そうだよな、こんなに弱気になってちゃダメだよな。よしっ!俺達の今日を祝って、パフェ早食い対決だ!負けたヤツは明日の昼奢りだぜ!」
「「「なっ!?」」」
「嫌とは言わせないぜ、バカ、やるんだろ?」
「ちっ、仕方ねぇな」
俺達のダンジョン挑戦初日はそうして夜が更けていった。ちなみに、早食い対決に負けたのは龍蔵だった。
♡♡♡
「どうかしたの?夏乃?」
「愛梨ちゃん、ううんなんでもないよ」
「ちゃんと何かあったら言ってくださいよ、貴方は私達のパーティのリーダーなのですから」
「唯ちゃんもありがとう、でも私がリーダーでよかったの?私だけ魔力評価がAだったのに……」
「そんなのウチらには関係ないでしょ、夏乃以外のみんなが夏乃がリーダーがいいって言ったんだから」
「冬ちゃん…………そうだよね、ちょっと私弱気になってたかも」
「分かってくれたならヨシっ!それはそうと、あんたらのクラスにかっこいいヤツはいなかったの?」
「また始まってしまいました、一応ここはダンジョンの中なのですが……」
「そんなこと気にしない!どうせ今日は私達の力がどれくらい通用するかのテストみたいなもんだし、ていうかそろそろ疲れたからウチ帰りたいし」
「冬のわがままが始まったら仕方ないわね〜、私もちょっと疲れてたし、ちょうどいいんじゃない?」
そこで夏乃に視線が集まる。
「今日はここで終わりにしよっか、入学式もあったし、明日から授業始まるからね」
そんな会話をして、4人はダンジョンの入口まで戻り、今日の成果を換金していた時に興味深い話が聞こえてきた。
「とんでもなくやべぇ4人がいたんだよ」
「そんなにやばかったのか?」
そんな、とある4人組を褒めちぎる内容の話だった。話途中の本人たちは気づいていないようだが、声が大きすぎて、現在協会の中にいる人達全員に聞こえているだろう。
「あれ、私達のことじゃない?人気者は困るわね!」
「ウチらならあたりまえっしょ、S評価3人にA評価1人、普通に考えておかしいパーティなんだし」
「うぅ、そうだよね……注目されちゃうよね……」
「貴方はいい加減視線に慣れましょう?見た目も可愛くて探索者としての能力もある、これまでよりももっと注目されることだってあるんですよ」
「分かってるけどぉ……」
夏乃が恥ずかしがり屋なことはこのパーティの周知の事実だ。全員が小学校から仲が良いので当たり前になんでも知っている。愛梨が早とちりしやすいということも。
「なんだっけな、リーダーの名前は覚えてるんだよ、確か…………春馬って言われてた気がする」
「他のやつの名前とかは聞かなかったのか?」
「結構すぐ別の道に行ったし、名前なんて聞かなくても仲良くすることくらいはできるだろ?」
「まあ、そうだけどよ……」
そう、奇しくも同じような早とちりを2つのパーティがしていた。
「私達の事じゃなかったみたいだね……あはは」
「ま、いずれウチらなら有名になるって、IVStarsもすぐ有名になったんだし!」
「あの方達はまた別格ですが……それでも真面目に探索者としてやっていけば、私達は上の方に行けますよ」
「春馬…………?」
「夏乃?気になることでもあった?」
「っ!?いや、なんでもないの!明日からも頑張ろうね!」
夏乃のその一言でその日は解散になった4人。同じ勘違いをした2つのチームが交差する時は、意外と早いかもしれない。
―――――――
今回は短くなってしまいました。
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