第4話 もしかして俺達の話……?


ダンジョンの前で目標を再確認した俺達は早速、第1層へ向かった。

 ちなみに、俺達のそれぞれの装備はこんな感じだ。

 ――――

 青木春馬 片手剣

 沖田和哉 日本刀

 琥珀望 杖

 朝倉龍蔵 双剣

 ――――


 俺は火・土の魔法を駆使して戦う魔法剣士型。和哉は光と闇の魔法の特徴を活かし、スピードで攻めるスタイリッシュな侍のような戦い方。望は基本的には、水と風の魔法で3人を支援する形なのだが、杖がメイス代わりにもなるので、近距離戦もいざとなったら戦える。龍蔵は空間魔法を使えるので、身軽な双剣を選んだ。

 いざこうやって見ると攻撃にステータスを振りすぎているような気もするが……まあ、辛くなったらその時考えることにしよう。


「そういえば、春馬君は星属性について何か分かったことある?」

 

「それが、まだなんもわかんないんだよな……家で調べたりしてみたけど初めての属性っぽいし、魔法も星なんて言われても想像がつかなくてさ」

 

「まあそりゃ、最近高校に入ったばっかりのやつに宇宙とかそんなスケールのデカい話されてもって感じだよな」

 

「そっかぁ〜、でもさ、ダンジョンをの攻略を進めてるうちに何かわかるかもしれないしさ、あんまり気負わずに行こうよ」

 

「望の言う通りだ、焦りは禁物だ、俺のデータも強く警告している」


 今の話からも分かる通り、俺は人類初の星属性と言うものが属性欄に書かれていた。探索者協会の人達とか偉い人が話を聞きに来るかも!と思って結構準備してたんだけど、手続きとか色々あるみたいで、話を聞くってなっても早くても1ヶ月後くらいになると言われた。


「まあ、そうだよな……地道に頑張っていくしかないんだよな!」


 俺がそんな決意をしたところで、ソイツは現れた。

 俺達の原点――

「スライムだ」


「やっと、ここまで来たんだね、僕達」


「もうあの時の、何も出来なかった俺達はいない。スライムに、ダンジョンに対抗する術を持ったんだ」


 「スライム如きで立ち止まるようじゃ、IVStarsには追いつけない、とデータは言っている」


「望、和哉、龍蔵…………お前ら、怖くないか?」


「怖くないって言えば嘘になるけど、これから成長する機会を失うってことの方が僕は怖い。だから、戦う」


「いいこと言うじゃねぇか望。春馬……いや、これを言うのは違うな、そんな顔してるお前には、そんな楽しそうな顔してる奴にかける言葉は1つだ。行こうぜ」


「ここからが俺達の序章だろう」


「大丈夫そうだな、スライムの数は4匹、ちょうど1人ずつ相手にできる。全員、目の前のやつと交戦だ、行くぞ!」


 そうして、俺達の戦いが始まった。

 俺はスライムに向かって走り出し、手始めに横なぎに右手の剣を振り抜いた。


「ピギ…………」


 ………………あれ?スライム死んだ?いやいやまさか、最弱とは言ってもあのスライムだぞ?俺が相手にした奴はあの4体の中でも最弱だったんだろう、運が良かったんだろう、俺は。

 そうと思い、ほかの3人を見てみると、恐らく自分と同じような表情した顔が3つあった。


「なぁ、春馬……」


「やめろ、それ以上は言うな」


「あ、またスライムだよ!次は1、2……10匹もいるよ!」


「10匹だと……!?まずは俺が先頭の2匹を倒す、そうすればお前達3人で行ける、とデータは言っている」


 そう言って、龍蔵はスライムに向かって走り出した。身体強化を使っているのか、とてつもないスピードで肉薄している。そして龍蔵は宣言通り先頭の2体を切り伏せた、所までは良かったのだが…………思いのほか迫ってきていた8匹のスライムに俺達は間に合わないと察したのか、残りも片付けた。とてもあっさりと。


「「「………………」」」


「俺のデータが間違いで無ければ、なのだが……」


「もういいよ、言ってくれ龍蔵」


「スライムって、弱くないか……?」


 スライムは、弱かった。俺達の6年間の目標の1つでもあった打倒スライム、厳しくないとは思っていたが、こんなに弱いとは思ってなかった。


「で、でも待って、僕達が出会ったのは変異種だったって言う可能性はない?」


「そうか、スライムだけは変異種になろうとも見た目が変わらない、そしてその強さは普通のスライムの5倍程の力を持ってるって訓練の時教えられたもんな」


「そうだな、そうと決まれば、とりあえず先に進んでみようぜ」


 スライムが落とした魔石を回収して、俺達は第1層の先に進んだ。


 この時4人は気づいていなかった。これまでの6年間の努力に恵まれた才能、それに驕る事無く身体強化の質もあげることに専念していた。その結果4人は、とても駆け出しとは言えない実力をつけていたことに。


 ――――


「よし!これでスライム100匹討伐完了!」


「魔石が100個だね、ダンジョンから出たら打ち上げしようよ!」


「いいなそれ、初ダンジョン探索と帰還記念でな」


 俺達4人はあれから第1層のスライムを狩りまくった。同じ新人探索者達とも顔を合わせたりして、かなり充実した初探索となっていた。そして分かったこともあった。俺達は第1層では身体強化をかけなくてもスライムは倒せたし、魔法は使う場面もなかった。その結果から明日からは第2層から潜ることになったのだ。


「とりあえず、今日はこの辺で帰ろう」


「まあそうだなぁ、100匹ってキリもいいし、夜ご飯を食べるにはちょうどいい時間か」


 話をまとめて、探索者協会の建物まで戻り、スライムの魔石100個を換金した。


「スライムの魔石って1個100円もするんだね、今日の夜ご飯は1人2500分なら実質タダだよ」


「だが、ここで無駄遣いすれば良くない癖が着いてしまう、ということで俺はびっくりヤンキーを推薦する」


「あぁ、びっくりヤンキーか、俺はそこでもいいけど和哉と望は行きたい所あるか?」


「いや、俺もそこでいいぜ」


「僕も大丈夫」


「なら決まりだな、こっから歩いて行ける距離だし、向かおう、俺はもう腹減って限界だ」


「「「同じく」」」


 行先も決まったことで、協会から出ようとした俺達を止めたのは、同じ初心者と思われる人の一言だった。


「なあ、お前ら見たか?すげえ初心者を見ちまったんだよ!」


「そんな凄いヤツらがいたのか?」


「ああ、俺らと同じ初心者なのに、魔物をバッタバッタと倒していくんだ、俺は一生忘れねぇよ」


 その話をしていた片方の男は、第1層で少し話した男だった。となると、話していたのは俺達の事か?


「春馬、あれはもしかして……」


「僕達の話をしてくれてるのかな」


「だとしたら、少し恥ずかしいものだな」


「慣れておけ、俺達の目指す場所はIVStarsよりも上だ、あれくらいの視線や噂話、胸を張って聞いていよう」


「春馬君、かっこいいこと言おうとしてるのかもしれないけど、顔赤いし照れてるのバレバレだよ」


「ち、ちがっ!」


「春馬、無理しなくて、いいんだぜ!」


「クソォ!なんなんだお前ら!」


 だが、俺の顔をもっと赤くする発言が聞こえてきた。


「本当にかっこよかったなぁ……あの4人組、全員とんでもなく可愛い女の子だった、お近付きになりたい」


「「「「……………………」」」」


 女の子、その一言だけで俺達の早とちりだと言うことが分かってしまった。


「早くご飯食べに行こーぜ……」


「そうだな……」


 そして4人とも顔を赤くして、協会を後にした。




「あ、後もう1つやべぇチームがいたんだ」


「まだいるのかよ、俺と同期だってのにこれじゃあ自信無くしちまうぜ。」


「仕方ないだろ、俺らは魔力量Bだし、今年はIVStarsを超えるかもしれないって言われてる世代だからな……ってそれより、もう1つのチームのことなんだけど、そいつらめちゃくちゃ強えのにずっと第1層でスライムばっかり狩り続けてたんだよ」


「はぁ?どういうことだ?別にスライムを狩るくらいなら俺達でも出来るし、どこがヤバいんだ?」


「そいつらと俺のチームがたまたま会ってさ、1回だけスライムを一緒に狩ったんだけど、俺のチームは討伐数0でそいつらが40だ。」


「ん?おかしくないか?一緒に行ったんだろ?」


「なんか、4人とも調整しながらだからやりすぎたらごめん、とか言ってたけどびっくりしたよ。1人がスライム10匹倒すの5秒もかかってなかった」


「1つ確認なんだけど、同じ位置から走り出したのか?」


「あぁ、並んで歩いてたからな、俺のチームがスライムの所に着く前にもうスライムは全部消えてた」


「そいつは、ヤバいな」


「俺のチームのヤツらに聞いても、見えなかったって言ってた、俺もそいつらが横から消えたと思ったらスライムが消えてたんだ」


「なんだよ、それ……意味わかんねぇ、もう今日はヤケ食いだ!」


「あぁ!吐くまで食ってやる!!」


 2人の平凡な学生が協会の広間で大声で話していた、2つのチーム、青木春馬らのチームと謎の美少女4人組の噂は瞬く間に探索者達の間に広がった。

 

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